約 194,807 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2064.html
「ゆっくりちくろ」 ある男がゆっくりを求めて山へ入った。 ゆっくりが幻想郷の甘味事情を一変させて随分と経つ。 加工所による廉価で安定した供給は、芋や果実では味わえない濃い甘さを庶民の手に届くようにしたが、 日々食べるとなれば滅多に食べれない頃とは味も変わってくる。 昔は甘味と言えば滅多に食べれないからこそとんでもなく甘く、売るほうも塩を入れて少ない砂糖で甘く感じさせたり、 どぎついほどに甘い物が高級品として出回ったものだが、毎日食べれるほどに普及した今では、甘さ控えめでいくつでも食べられる味が人気だ。 しかし男はそれでは満足できなかった。頭が割れるような強烈な糖分の塊が欲しかった。 そのためには自分で作るしかない。 開けたところに出るとゆっくりがいた。近づくと 「ゆゆ!にんげんがきたよ!」 「ゆっくりにげるよ!」 などと声がする。 「まりさがおとりになるからみんなはゆっくりいそいでね!」 そう言って一匹のまりさがこちらへ向かってきた。作戦を自分でばらしているのでは世話がない。 「ここはまりさたちのゆっくりぷれいすだよ……ぜ!ば、ばかなにんげんはさっさとでていくんだぜ!」 近づいた後、人間の手が届かない所でとび跳ねながら挑発してくるまりさ。演技は大根だ。 男が目線を上げると、群れが右手の雑木林に入って行くところだった。 「なにそののろさ。うんちなの?しぬの?くやしかったらまりさをつかまえてみるんだぜ!」 男が歩きだすと大げさなほど後退して挑発し、誘うように左手へ跳ねていく。 (せめて口に出して言わなければなあ) そう思いながら男はまりさを無視して群れが消えた雑木林へ向かう。 「どぼじでそっぢにいぐのおおおお!?」 シカトされたまりさが口調も忘れて叫ぶ。 「まりざはごっぢなんだぜえええ!?ばがにずるまりざをいじめてみるんだぜええ!?」 男は顔も向けず、ゆるゆると雑木林に近づいていく。 まりさは必死に跳ねて追いつくと、ぼよんぼよんとコミカルな音を立てて男の足に体当たりをした。 「そっぢにはなにもないんだぜ!?まりざのおうぢはむこうなんだぜええええ!?」 男が歩くたびに蹴られることになりながら、まりさはまとわりつくのを止めない。転がってもすぐさま向かってくる。 雑木林に入ると逃げたはずのゆっくり達がいた。 「まりさがにんげんをひきつけてくれるかられいむたちはゆっくりできるよ!」 「ゆっくりー♪」 どうやらまりさの囮で安心していたらしい。警戒も怠ってゆっくりしている。 「みんなにげでええええええ!」 まりさの声でれいむが視線を上げると、騙したはずの人間と、土で汚れたまりさがいた。 「俺は饅頭が食いたい。一匹差し出すなら他の奴らは見逃してやろう」 男は群れの前でそう告げる。 男が目の前に現れた時は狂乱状態になったが、逃げ出そうとする奴らは 「ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくりしていってね!」」」 条件反射の硬直時間を利用して手近な枝で串刺しにされた。 「逃げたら刺す」 比較的賢いゆっくりの集まりなのか、逃走が不可能と知るとおとなしくなった。 一人差し出せば、他全員の命が助かる。ゆっくりに対しては破格の条件と言えた。では、誰が犠牲になるか。 「おにいさん!さっきはごめんなさい!おわびにまりさをたべてね!」 そう言って真っ先に声を上げたのがおとりになったまりさだった。挑発の必要がなくなったからか、だぜ口調ではなくなっている。 「まりざだめえええ」 れいむが泣いて抗議をする。 「ゆ!れいむ!むれのみんながみつかったのはまりさのせきにんだよ!れいむはまりさのぶんもゆっくりしてね!」 「まりさはむれのためにきけんなおとりをやってくれたよ!これいじょうぎせいにならなくていいよ!」 群れ全体が沈痛なムードに包まれる。さながら出征の壮行会。 「あー悪いんだけどな」 「ゆ?」 「お前は土で汚れてるから駄目」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおお!?」 まりさの泣き顔が歪む。いったん決まりかけた安堵感を奪われ、群れのゆっくりたちの顔には戸惑いが浮かぶ。 まさか、自分が食べられなくてはいけないのか。原始的な恐怖は餡子脳を縛るには十分過ぎた。 群れのゆっくりはどれも平均より清潔で丸々としていた。どれを食べても当たりが期待できる。 「そっちで選べないんなら勝手に選ぶぞ」 「おにいさん、れいむをたべてね!」 沈黙に痺れを切らせた男がそう声をかけると、弾かれるように先程のれいむが叫んだ。 「どぼじでぞんなごどいうのおおおお!?」 「れいむいっぢゃだめえええ!」 「ぢんぼおおおおお!?」 「むぎゅうううう!?」 「おねーしゃんちんじゃやだあああ!」 随分と信望があるれいむなのか、群れ全体が怒号を発して引き止める。そんな群れを慈しみをこめた目で見渡したあと、 れいむは男に向き直った。 「おにいさん!れいむならだいじょうぶだよね!?これでむれのみんなはゆっくりできるんだよね!?」 「直接危害は加えん」 そう返事をしてれいむを掴み、帰ろうとする。外では手も汚いし、携行の飲料水も乏しい。 「みんな、ゆっくりしていってね!」 「「ゆ、ゆっくりしていってね!」」 「むきゅん!だめよ!」 愁嘆場に背を向けたところ、物言いがついた。 「このばでたべてくれないとにんげんはしんじられないわ!」 「なにをいっでるのばちゅりぃぃぃ!?」 すわ身代りかと思えば予想外の抗議に、まりさは信じられないといった形相で叫ぶ。 「みんなよくきいて!にんげんはずるがしこいのよ!たべたあとににげたからってうそをついてまたくるかもしれないのよ! つらいけどむれのあんぜんのためにはみんながれいむはきちんとたべられたというしょうにんになるしかないの!」 「そんな……」 なんという猜疑心。その気ならば嘘をつかずに一斉に捕まえれば済むだけなのだが、第一ゆっくり相手の約束なんざ人間の温情で 成立しているようなものなのだが、気を回す割りにはその辺の前提がすっぽり抜けている。所詮饅頭の知恵。 男は腹が減っていることは確かだったので、適当に塵を払ってかぶりつく。 「ゆっ……!」 れいむの押し殺した声が聞こえた。さらりとした上品な甘さ。美味いが、この程度なら人里で買えば済む。 「あんま美味くないなあ」 「れいむがおいしくないわけないでしょおおお!!!」 男のつぶやきに、まりさがどこかずれた反論を叫ぶ。 この短時間に感情の振幅が激しかったためか、髪が乱れて目の輝きが尋常ではない。 あちらを素直に食っておけばよかったかと思ったが、約束したのでれいむを食うことにする。しかし甘みが足りない。 ゆっくりは苦痛を味わうほどに甘くなるらしいが、汚れた手で餡子をいじりたくないし髪飾りもきちんと味わいたい。 仲間を殺すさまを見せるのがスタンダードだが、約束したのでそれも出来ない。 傷を付けずに苦痛を味あわせる方法。設備もない野外で出来ることは何か。野外だからこそ出来ることは何か。 『まりざのおうぢはむこうなんだぜええええ!?』 「あ」 思いついた。 「なあれいむ。お前の家に案内してくれないか?」 巣は目の前にあった。上手いこと根の隆起を利用して屋根にした穴だった。 中にゆっくりがいればともかく、単体としてはただの気にも留めない深めの穴だ。 奥をのぞいてみると滑らかな石や昆虫の死骸が貯め込まれていた。 「ここがれいむのおうちかあ」 男は意識して柔らかいしゃべり方で話しかける。 「大きくて住みやすそうだね。作るの大変だったろう?」 「うん……まりさもてつだってくれて、ふたりで……」 痛みに堪えながら、かじられた頬が動かぬよう小声でれいむが答える。 「まりさは一緒に住んでないの?」 「むきゅ!けっこんしてないふたりがおなじやねのしたにいるのはふうきがみだれるわ!」 ラブコメの外野のようなことを言うぱちゅりー。 あれだけ仲がいいのにつがいではないということは、大きさでは分からないがまだ成熟し切ってないのだろう。 甘みが少ないわけが納得できた。ともあれ、 「もう誰も住まないなら壊していいよね」 そう言って、足で穴を崩していく。 「れいむのおうちがあああ!」 「でいぶとまりざのだからものがああ!」 叫ぶと共にこぼれる餡子を受け止め、舐める。甘さが強くなったが、まだ足りない。 もっと悪魔のように黒く天使のように純で、まるで恋のように甘くなければ駄目だった。 土が宝物の石も昆虫も埋めていく。淵を削って落とし、深い穴が広く浅いくぼみに変わったところでよく踏んで均す。 「おもいでのだからものおおおお!」 半狂乱で掘りかかろうとするまりさ。しかし踏み固められた地面は簡単には掘り進めない。 穴掘りに夢中になっているまりさは放っておいて、男は群れの一同に語りかける。 「なあみんな。これでれいむとお別れだ。何か言っておくことはないかな?」 「れいむ、いままでありがとう……」 「みんな……」 「いやそんなんじゃなくてね」 「「?」」 「今まで気を遣って言えなかった不満、無いかな?」 「れ、れいむはまりさといちゃいちゃしすぎよ!ふしだらだわ!」 「れいむにふまんなんてないよ!」 と言っていた一同だったが、 「れいむがおいしくないと他の子も食べちゃうかもなあ」 と脅すと、口火を切ったのはぱちゅりーだった。それでもまだ注意するような物言いだ。 「とかいはにいわせてもらえばれいむはまりさにたよりすぎよ!こんかいだってもっとおくまでにげていればよかったのよ! それをれいむがあんぜんだっていうから……いうがらああああ!ぁぁあれいむじなないでぇぇええ」 責めてると思ったら泣き出すアリス。これなんてツンデレ?それも次の告発で終わる。 「おねーしゃんはまりしゃたちにおやつはきまったじかんにっていってるのに、よるまりしゃおねーしゃんとこっそりたべていてずるいよ!」 「なんでじっているのおおぅ!?」 「どういうことよれいむうううう!」 「あいびきだねわかるよー」 「まりざはわたざないがらあああ!れいむがいなくなったあどひとりじめするがらああああ!」 死にゆく者にムチ打つありす。 「むきゅ!れいむ!つごうのいいときだけるーるをおしつけるようではわるいこよ!」 追討ちをかけるぱちゅりー。 「わるいこがたべられるのはじごうじとくだねー、わかるよー」 本当に分かっているのか傷口に塩を塗り込むちぇん。 「ちぃーんぽっ」 もはや何言ってんだか人間では分からないみょん。 「「ゆっくりしんでいってね!」」 逢引が発覚しただけでこの言われよう。果たしてまりさはどれだけのフラグを立てていたのか。 さっきまではれいむは命がけで群れを救おうとする尊い犠牲だったのに、今では公開処刑、吊るし上げである。 「れいむ!たからものをほりかえしたよ!まりさはれいむのことをずうぅっとわすれないよ!」 天然スケコマシがやりとげた笑顔で戻ってきた。しかし離れていたうちに急変した場の雰囲気についていけない。 「どぼじでみんなれいむのわるぐちいっでるのおおおおお!?」 「まりさ!おいしくないれいむがわるいんだよ!」 「むきゅ!くるしむとおいしくなるということは、おいしくないれいむはくるしんでなかったのね!」 「れいむほどゆっくりしてるゆっくりがおいしくないわけないでしょおおおお!?」 「いいおもいばかりしてるわるいゆっくりなんだねー。わかるよー」 「おばえらにでいぶのなにがわがるっでいうんだあああああ!」 矢継ぎ早にれいむを罵倒されたまりさは声を張り上げて仲間に襲いかかった。 「おいしくなくてごめんなさい……おいしくなくてごめんなさい……」 れいむは泣きながら謝り続けている。そろそろいいかと餡子を舐めてみる。脊髄に衝撃が走るほどに甘い。かなりいい感じだ。 だがもうちょっといけそうか? 「れいむ。見てごらん。まりさが暴れてるよ」 そう声をかけると、れいむの目の焦点が定まる。 「まりさっ!?」 まりさは複数の仲間に体当たりを繰り返していた。ぱちゅりーは一撃で中身をこぼし、ありすとちぇんがまりさの攻撃を受け止めている。 「ちーんぽっ」 その隙にみょんが頭上からのしかかり、押さえつけた。 「まりさ!わるいのはれいむなの!」 「れいむはなに゛もわ゛るぐないいいい!」 「わるいの!おいしくないれいむはくるしんでないずるいゆっくりなの!」 「れいむ。助けたかった仲間が死にそうだねえ」 「ゆゆ!?」 「ほら、ぱちゅりー。体弱いんだろ?」 二匹だけの世界に入っていたところを引き戻す。ようやく瀕死状態のぱちゅりーに気付いたようだ。 「ああああ゛ぱちゅりぃぃぃぃ!どおじでえ゛え゛え゛え゛」 滂沱の涙で手が濡れる。甘ったるい匂いはシロップか。 「ごめんなさい!ごめんなさい!ゆっくりばっかりしているわるいれいむでごめんなさい!おいしいものたべててぼめんなさい! まりざといっじょにたべたぢょうぢょざんおいじがったですうう!おはなさんはなんでもおいじがっだですうう! つめたいおみずおいじがったでずうう!でいぶはどろみずがおにあいでしだあああ!」 どこかのマラソン選手を彷彿とさせる言葉を発し始めたれいむ。その餡子を男は鬼気迫る形相で食らう。 甘い、甘いぞ。既に舌の感覚がなくなるほどなのに、舐めるたびに甘みが毒々しく舌を打つ。甘過ぎて頭痛がする。 それでいて瑞々しく、食べるたびに喉の渇きが癒される。 「おうちにすめててごめんなざい!まりざにてづだわぜでごめんなざい!れいむはまりざをひどりじめしようどしていたわるいこでずうう! ともだぢがいてごめんなざい!みんなでずるひなたぼっごぎもちよかったですうう!あかちゃんたちかわいかったですうう! いっばいおうだをうだってゆっぐりしまじだあああ!ありずどばちゅりぃぃ、めいわくかけてごめんなさいいい! ちぇんとみょん、いつもおぞくであじをひっばっでごめんなざい!!れいむはみんなどながよぐできでてじあわぜでじたあああ!」 走馬灯のような懺悔が紡がれるたびに、騒いでいた群れが静かになる。れいむがどれだけ自分たちのことを大事に思っていたか分かったのだ。 そのれいむに、ひどいことを言ってしまった。 「ごめんなさい!れいむのことわるいゆっくりっていってごめんなさい!」 「うまれでぎでごめんんざいいい!いづもあまえででごべんなざいいい!」 詫びの言葉は届かない。れいむが錯乱状態にあるのはもちろんのこと、恐ろしい速さで男がれいむを貪っているからである。 既に顔面とそれに付随する餡子しか残っていない。それも一口で噛み砕かれる。最期におかあさんとだけ残して、れいむは男の腹に消えた。 男が我に返ると残りのゆっくり達が汚れたまま放心していた。 ぱちゅりーは死亡。まりさも強く押さえつけられて瀕死。ありす、ちぇん、みょん、とばっちりを受けて子ゆっくりもぼろぼろだ。 存在すら忘れられていた、串刺しにされたゆっくりもいる。かつての清潔さと福々しさは見る影もない。 どうしてここまでこの群れは崩壊してしまったのだろう。俺はただ美味しいお菓子が食べたかっただけなのに。 そう思いながら今度こそ男はその場を後にした。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3599.html
生ゴミジュースれいむ れいむのいる部屋の戸が開いた。 「おはよー」 「ゆゆっ!ごはん!はやくしてね!」 男が部屋に入ってくると、れいむには金属の管が見えた。 この管を通して餌をもらっているためにすぐに反応する。 床を汚されたくないので彼はこれで流動食を与えているのだ。 「はい、いただきますして」 「いただきます♪」 「よくできました」 彼は笑顔で答える。 れいむは管をくわえる。 すると彼は管に餌を流し込んだ。 このれいむにとって適正の量だ。 れいむはこの流動食をとても気に入っている。 「む~しゃ、む~しゃ、しあわせ~♪」 結果こうして喋ってしまうため、結局床は汚れてしまうのがキズだ。 「れいむ、食事中に喋っちゃダメだってもう何度も教えたよー」 「ごめんね、おにいさん!」 「うん。いいよ、ちゃんとごめんなさいできてれいむは偉いね!」 「ゆぅ!うれしいよ!」 しかし床はどんどん汚れていく。 「ゆう~!ごちそうさま!」 「ま、本当は全然許してないので」 「ゆ!?なにかいった?」 ――夕方 「さて、れいむ、御飯だよ」 今度は蛇腹になっている金属性の管を用意してきた。 その先にはポンプが付いており、中に食糧が入っている。 先ほどとは少し様子が違った。 れいむは元気一杯に小さな体を跳ねさせ、男に向かって来る。 「ごはん、ごはん!はやくたべさせてね!」 れいむはいつものように管の先をくわえようとすると、男はそれを遮って小さな皿を出した。 「ちょっとまってね、これをお口に入れてね」 「ゆゆ?おさらさん?」 「うん、そうだよ、れいむは賢いね!」 男はれいむに満面の笑みで答える。れいむも破顔する。 「ゆへへ!おにいさんにほめられちゃった!」 皿の真ん中には管がハマるくらいの穴が開けてある。 彼が組み合わせるとすっぽりと入り、カチリという金属質の音がした。 興味深げにそれを見ている拳大のれいむの口に入れる。 皿の大きさは直径3cm。 れいむのくちびるの内側は皿に占拠される事になり、ろれつが回らなくなった。 「ひゅぅ?」 流石におかしいと思ったのか、くぐもった声で彼に違和感を訴える。 「ひゅ!ひょっほおはひいよ!おひいはん!」 「いや?おかしくないぞ。御飯食べたいだろ」 「ひゅ!そうはへ!ひゅっひゅひゅ~♪」 この状態でも小さなれいむはまともな御飯が食べられると思っているようだ。 彼の言葉に疑いを持たず、笑顔で飛び跳ねる。 「じゃあ、いただきますだよ!」 「ひははひは~ふ!」 彼がボタンをポチリと入れる。するとポンプが振動し、食糧を送り出し始めた。 「ひゅ!?ひゅぼぉおおおおおおおおお!!!!!!!」 もの凄い勢いで。 「ひょっ!ひょりいは!」 お兄さん、と呼ぼうとしたのだろうか、もう声にならない。 しかも内容は生ゴミを粉砕した生ゴミジュースだ。 異様な味と量でれいむの顔は見る見る内に赤を通り越し青くなっていく。 「~~っ゛~ぎょぼっ゛!!!!!」 彼はれいむを、捨てようと思っていた水槽の中に安置した。 管は水槽の天井に作った穴から通す。床を汚さないようにするためだ。 ポンプと蛇腹の管、水槽は一つの装置になった。 その振動に体が微妙に震えながらも、れいむは彼に何かを訴えようとしている。 「流石れいむ!生きてる価値のないゴミ!あはははは」 彼の笑い声が聞こえたのだろうか、れいむは涙を流し始めた。 頬が生ゴミで一杯になっているが、皿が逆流を止めてくる。 強度の弱い部分がメリメリと広がってくる。 「びゅぼぉ!!!!!」 「もう声になってねぇって。助けてないからね。だってお前毎日家の床汚すんだもん」 「ぼびいばん!」 「まだしゃべれんの?でも元々殺すつもりで飼ったから。諦めて」 「ぼばあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」 「うっわ、きんもー」 「びべぇえええ!!!!」 結果球形の物体になると、目がはじけ飛び、中から生ゴミジュースがあふれ出した。 ビクン、ビクン、と痙攣しているが、まだ生きているようだ。 眼窩からはジュースがジョロジョロと流れ落ちてくる。 「まだ生きてんのかよ……」 彼は長靴を履くと、水槽の天井を外し、れいむを踏み潰した。 柔らかい体の中で皿が割れる感触がする。 「お゛ぎょろ゛!?」 「凄い生命力だな」 「ぉ、に……ざ……」 れいむは眼が無く、顔も粉砕された状態で喋り始めた。 声は皿がなくなった事でくぐもってはいないが、破壊されているせいで今度は聴こえ辛くなっている。 「おに……ざ……だんで……ごんな……」 「ゴミは死んでろよ」 「ゆっ……がな……じい……よ」 「そうだねぇ。お前みたいなゴミを片付けないといけないかと思うとホントに怖気が立つよ」 「ゅ……ゅぇぇん……」 「泣いても何もでねぇよ!誰も助けてくれねぇよ!バカバカバーカ!うはははは!」 「ぉに……さ……」 れいむは水槽の外にある彼の足にすりよろうとした。 壊れた体で水槽の中をずりずりと動く。 餡子がはみ出て、水槽の壁に弱弱しくぶつかる。 その様子に、彼は形容しがたい物を感じた。 「すーり、すり、しちゃぃょ……」 「は?え?」 「すーり、ずり、じぢゃぃ……」 「な、なんで!?」 「だっで、おに……ざん、は、れー、む、の……おどーじゃ……ん」 「ちょ、まて!なんで、お父さん……?」 「おに……ざん、に、おどーじゃん、で、いっだら、ぎらわれ、るっで、おもっだ……がら」 「な、なんで」 「も、もど、ぃ、ぃっしょに……ごは、ん……だべだがっだょ……ぃ、ぃっじょに……ぉさ、んぽ……じで……ゅぐ、ゅっぐり、ぉに、ぉどー……じゃん」 「ちょっとまて、どうして」 「だぃ…じゅぎ……」 れいむは事切れた。 「な、なんだよ、お、俺がお父さん?何っ、ハッ、何言ってんの?ゆっくりの分際で!何言ってんの!?俺、お前を殺したんだけど?殺したのに俺を求めたの?バカじゃないの?ねぇ!何とか言えよ!なぁ!!!!!」 彼は水槽を蹴飛ばすが、れいむはそれに沿って水槽の中をただズルズルと滑るだけ。 部屋の中には生ゴミの臭いが満ちていた。
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3873.html
『ぱたれいむはゆっくりできるね』 4KB 虐待 ネタかぶりあったらごめんなさい. 「おちびちゃん、ゆっくりぴょんってするんだよ。」 「ゆぅ、れいむきょわいよぉ。」 最近やっとテニスボールほどの大きさになった子れいむがぷるぷるふるえながらためらっている。 「おかあさんがやってみせるからね。えいゆっ!」 親れいむは滑り台の上から飛び降りた。 通常のれいむ種よりおおきめのりぼんがぱたぱたと動いてゆっくり落ちていった。 「れいむおそらをとんでるみたい!おそらをとぶていどののうっりょくっ!だよ!!」 実際に空を飛んでいるわけではない。りぼんをぱたぱたさせても落下する速度が遅くなるだけである。 せいぜい滑空といったところか。 決して上昇することはできないのだ。 「おきゃーしゃんとってもゆっくちしてるにぇ!れいみゅも!れいみゅも!ぴょんってするよ!」 そういうと子れいむも飛び降りた。 子れいむが飛び降りるとれいむのりぼんもぱたぱたと羽ばたき、ゆっくりと落下していった。 ぱた種のれいむは『あんよ』が地面に接触していないと本ゆんの意思とはあまり関係なく勝手にぱたぱたと動くのだ。 奇形だったり足りなかったりしない限りはりぼんが動かないで死んでしまうということはない。 「れいみゅおちょらをとんでりゅよ!れいみゅはとりしゃん!」 あくまで滑空できるだけである。上昇できるわけではない。まったくもって鳥に失礼である。 「おちびちゃんとってもゆっくりしているよぉ~!これでおちびちゃんもりっぱならくっえんっ!のみこだね!」 子れいむは「ゆんっちょ」っと地面に着いた。 ドヤ顔で「らっくしょうっ!だったにぇ!これでおちょらもれいみゅのものだよ!」とか言っている。 ぱたれいむ親子はとってもゆっくりしていたのだった。 『ぱたれいむはゆっくりできるね』 「おっ!ぱたれいむみーっけ!」 鬼威惨はれいみゅをつまみあげた。 「おちょらをとんでるみちゃい!」 れいみゅのリボンがぱたぱた動く。 あんよが接触していないと勝手に動くのだ。 「ゆ!?にんげんさん?はなしてね!ゆっくりおちびちゃんをはなしてあげてね!」 「ゆゆ?にんげんしゃんゆっくちしていってにぇ!」 れいみゅはもみあげをぴこぴこ動かしながら鬼威惨に挨拶した。 「もみあげぴこぴこだけでもうざいのにりぼんがぱたぱたとかなんかもうね・・・。」 「ゆゆ!?おちびちゃんのぴこぴこさんもおかざりさんもとってもゆっくりしているでしょ?へんなこといわないでね!」 「ゆゆ~ん!れいみゅとっちぇもゆっくちしているよ?きゃわいくってごめんにぇ!!」 ぴこぴこぴこぴこ・・・。。 ぱたぱたぱたぱたぱたぱた・・・・。 「ビキィィィィ!!!!!!!!!!!!!!」 鬼威惨はれいみゅを池に向かって投げた。 「れいみゅおちょらをとんでるよぉぉ~~~!」 れいみゅのおかざりがぱたぱたと動いて池の上を滑空している。 でも決して上昇はしない。 子れいむにだんだん水面が近づいてゆく。 「ゆゆ?おみずさんはゆっくちできにゃいよ?はなれちぇね?れいみゅからはなれちぇね!」 「ゆあ~っ!おちびちゃんがぁぁ~~~~~!おちびちゃん!ゆっくりだよぉ!ゆっくりぱたぱたしてね!」 れいみゅのあんよが水面に接触する。 「ゆんやぁ~!あっちいってにぇ!おみずさんはゆっくちしないでれいみゅからはなれちぇにぇ~~~! ゆ?ゆゆぅ!?ゆびゃぁ!おぼれりゅぅ!れいみゅおぼれりゅよぉ~!ごひゅっ!おきゃーしゃんたちゅけちぇ! かわいいれいみゅがおぼれてりゅよぉぉ~!ゆごっふ!ゆっくちしにゃいでたちゅけてぇ!」 「おちびちゃ~ん!いまたすけるからね!」 そうはいっても母れいむには助ける方法もない。池の周りをぴょんぴょんはねながら「ゆっくり」とか言っているだけである。 「おまえも行け!」 そういうと鬼威惨はれいむを池に向かって蹴飛ばした。 「ゆびゃぁ!!!れいむそそらをとんでるみたい~~~!」 れいむは池の上でりぼんをぱたぱたさせている。 「おちびちゃ~んいまいくよぉぉ!」 「れい・・・みゅ・・・とけ・・・ちゃ・・・。もっちょ・・・ゆっくち・・・・・・。」 「ゆんや~~!おみずさんがこっちにくるぅぅ!おみずさんはこっちにこないでね!ゆっくりしないであっちにいってねぇぇぇ!」 結局れいむも水の中に落ちた。 「ゆんやぁぁぁぁ!!!!!!!!!!おみずさんはゆっくちできないぃぃ!!おぼれるぅぅれいむおぼれりゅよぉぉぉ!!」 もみあげをぴこぴこ動かし水面をを叩く。 りぼん相変わらずぱたぱたと動いている。 あとは池の魚が掃除してくれるだろう。 「すっきり~!」 鬼威惨は満足そうな笑顔で帰っていった。 おしまい。 過去作 anko3694『野良れいみゅは飼いゆっくちになりちゃい』 anko3697 れいみゅがおそうじするよっ! anko3704 おねえさんのゆうかにゃんに対する教育のようなもの
https://w.atwiki.jp/hutaba_ranking/pages/42.html
※ちょっと基本にかえってリハビリ 『森の消毒』 D.O ここは人里から少し森に入った所にある、平和でのどかなゆっくりプレイス。 気候も穏やかで大きな動物もおらず、背の低い草が青々と茂り、 木々も程よくまばらに生えているため、日の光も柔らかに大地を包む。 豊かにして優しい、実にゆっくりとしたゆっくりプレイスであった。 「ぱちゅり~!きのみさん、たくさんとれたのぜ!」 「むきゅ~・・・むきゅん!おつかれさま! じゃあ、これとこれはほぞんしょく、あとはみんなでたべましょう。」 「ゆっくりりかいしたのぜ!みんなー!ちょぞうこまではこぶの、てつだうのぜ!」 「「「わかるよー!!」」」 こんな場所なら当然だろうが、ここにはゆっくりの群れが住み着いていた。 まだ住み着いて一回しか冬を越していない、若い群れだ。 長はそこそこ賢いぱちゅりーが、補佐はその旦那さんであるまりさが行っている。 頭脳労働はぱちゅりーが行い、その提案に沿って群れを動かすリーダーがまりさの役割。 あえてぱちぇを長としているのは、その方が群れのみんなが言う事を聞いてくれそうだからである。 元からリーダー格のまりさについては、特に肩書きを必要とはしてなかったのであろう。 ともあれ、能力をきちんと考えた役割分担で、群れの運営はなかなかに上手くいっていた。 そんなゆっくりプレイス内にある一本の枯木の根元。 そこにれいむは住んでいた。 「おかーさん!おかえりなさい!!ゆわーい、いもむしさんだー!」 「おちびちゃん、ただいま!」 れいむはまだまだテニスボールサイズの子ゆっくり。 赤ちゃん言葉は抜け切り、お外を元気に跳ね回れる程度には成長しているものの、 まだまだ独り立ちは先のことだ。 それでも、父まりさが狩りの途中に命を落として以降、、 母れいむが狩りに行っている間は、妹たちの世話をしながらお留守番を一生懸命がんばっている。 「はやくむーちゃむーちゃさせちぇにぇ!れいみゅ、おなかぺーこぺーこにゃんだよ!」 「ゆゆ!?れいむ、おかーさんにおかえりなさい!がさきでしょ!」 「ゆぴっ!?・・・ゆぅ、ゆっくちおかえりなしゃい・・・ごめんにぇ。」 そんなれいむには、2匹の妹達がいる。 好奇心旺盛で元気いっぱい、少々わがままなのが玉にきずだが、 それでも姉である自分のいうことは素直に聞く次女れいむ。 「むーちゃむーちゃ、むーちゃ、ち、ち、ちあわちぇー!!」 「ま、まりさぁ。おくちのまわりがよごれてるよ。ぺーろぺーろ。」 「ゆぅぷ、ちゅっきりー!おねーしゃん、ありがちょーなのぢぇ!」 それと、とっても甘えん坊で、いつも自分にべったりの、お姉ちゃん子の末っ子まりさ。 れいむの可愛い妹達。 ホントは姉妹ももっと多かったのだが、野生の世界は全員無事に成長させてくれるほどには甘くない。 それでも、れいむは優しい母れいむと、自分を慕ってくれる妹達に囲まれて、 この上なくゆっくりした毎日を送っていた。 「しつれいするみょ~ん!おちびちゃんたち、あそびにいこうみょ~ん!」 「わかるよー。ちぇんたちとおそとであそぼうねー。」 「むほぉ!むほぉぉ!」 れいむ一家が仲良く昼ごはんをむーしゃむーしゃしていると、 今日も群れの保育担当であるみょん達が、赤ゆっくり達に遊びのお誘いに来た。 天気のいい日には、この群れでは赤ゆっくり達を広場に集め、みんなで仲良く遊ばせているのだ。 同年代の赤ゆっくり達を仲良く遊ばせることで、将来大きくなってからも群れが結束するように、との考えである。 まあ実際のところは、手のかかる赤ゆっくり達を一時的にでも一か所に集めて管理し、 親ゆっくり達の負担を軽減しようという狙いがあったりするのだが。 「ゆあーい!れいみゅ、みょんおにぇーしゃんたちと、あしょんでくるにぇ!」 「ゆふふ。じゃあ、みょん、ちぇん、ありす。おちびちゃんをよろしくね。」 「むほぉおお!!」 「ゆぃ。まりしゃ、おかーしゃんとゆっくちしゅるのじぇ!」 「ゆ?ゆふふ。おちびちゃんは、まだまだあまえんぼさんだね。」 もちろんどんな赤ゆっくりでも連れていくわけではない。 ベッドから這い出れない、生まれて数日以内の赤ゆっくりは、もちろんおうちで母親が世話をするし、 末っ子まりさのようにまだまだ精神的に幼い赤ゆっくりは、両親の元に残ることも多い。 「おかーしゃん!おねーしゃん!いってくるにぇ!」 「「ゆっくりいってらっしゃい!!」」 ともあれ、普段おうちからも出してもらえない赤ゆっくりにとって、 この青空お遊戯会は、おとな社会への最初の一歩なのであった。 次女れいむは保育みょん達の方に跳ねながら、母達に輝くような笑顔を見せて出発の挨拶をした。 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 そしてこれが、れいむ一家が仲良く顔を合わせた最後の時になった。 ------------------------------------------------- 「むきゅきゅ、まりさ。むれのおちびちゃんたち、ゆっくりしてるわね。」 「そうなのぜ~。これもぱちゅりーのおかげなのぜ~。」 「むきゅぅん。まりさがきょうりょくしてくれてるからよ。ゆぅ・・・すーりすーり。」 「だ、だめなのぜぇ。こんなおそとですっきりーなんて、はずかしいのぜぇ。すーりすーり・・・」 群れの素晴らしいゆっくりっぷりに、思わずすっきりーしてしまいそうになる長ぱちゅりー達。 保育みょん達が集めた赤ゆっくり達は、その長ぱちぇと補佐まりさが見守る小さな広場の中で、 楽しそうな声を上げながら遊びまわっていた。 「おし~りふりふり、の~びの~び!うんうんさんも~おでかけするよ~!す~す~、すっきり~!」 「「「うんうんしゅるよ~!しゅっきり~!」」」 保育ちぇんは最近お腹の調子が悪いおちびちゃん達を集め、お通じをよくするうんうん体操をさせる。 「むほぉおお!むほぉおお!むほぉ!」 「「「みゅ、みゅほぉおお!!ちゅ、ちゅっきり!」」」 保育ありすは赤ありす達を集め、都会派になるための礼儀作法やコーディネート技術を教えている。 「ちょうちょしゃん!ゆっくちまっちぇ~!」 「ゆっくちこっちにくるのじぇ!まりしゃがむーちゃむーちゃしてあげるのじぇ!」 「おはなしゃん、れいみゅにゆっくちたべられちぇにぇ!」 また、お腹がすいた赤ゆっくり達は、狩りの練習を兼ねて野原の美味しい恵みを味わう。 本能的に備わっているのであろう。 遊びの内容も、将来おとなになってから役立つ技能を身につけるのに必要なものなのだ。 「まりしゃがぷくーするのじぇ!ぷっきゅ~!」 「ゆわわ~、しゅごいにぇ!まりしゃはさいっきょうのゆっくりだにぇ!」 「ゆゆぅ~ん。でも、おとーしゃんのほうが、ぷっく~はおっきいのじぇ!おとーしゃんがさいっきょうなのじぇ!」 口の中に空気を溜めて体を膨らませる、威嚇行動であるぷくーの練習をしている赤ゆっくりもいる。 これなら、将来は家族達を守っていける、立派なおとなになれることだろう。 「かけっこだよー!ちぇんについてこれるー。」 「みゅほぉ!みゅほおお!!」 「あ、ありしゅ?おめめがこわいよー!?」 森で生きるには、駆けっこの速さも大事な技能だ。 多くのおちびちゃん達は、有り余る元気を発散させるように、広場の端から端まで元気に跳ねまわっている。 ・・・この広場で遊ぶおちびちゃん、群れの次代を担う新しい生命達は、 子育てのベテランである保育ゆっくり達に見守られ、元気に遊びながら目に見えるほどスクスクと成長し続けていた。 その明るい未来に、一点の曇りすらないかのように・・・ ガサッ。ガサッ。 「ゆぅ?」×200 そこに、なんの前触れもなく、突然の来訪者が現れた。 「むきゅ?・・・にん、げんさん?」 それは、長ぱちゅりーを含め、群れでも数匹しか見た事のない生き物。 ゆっくりと同じ言葉を使い、胴付きゆっくりのような体を持った不思議生物。 ・・・『にんげんさん』。 「ぽかーん。」×200 赤ゆっくり達は、その未知の生物を見て、逃げるでもなく声をかけるでもなく、 口をぽかーんと開けてその姿を見上げていた。 にんげんさんは、ひとりではなく、この広場をぐるっと囲めるほどの人数がいて、 そして手には、先端が赤くメラメラと燃える棒、松明を持っていた。 まだ真昼間で、森の中でも心地よいほど明るいというのに。 しばらくお互いに無言のまま、広場には静寂が続いた。 「おにーしゃん!ここは、れいみゅたちのゆっくちぷれいすだよ!ゆっくちしちぇっちぇにぇ!!」 その静寂を破り、最初ににんげんさんに声をかけたのは、ここにいた赤ゆっくり達の中でも特に好奇心の強いゆっくり。 あの、れいむ一家の次女れいむだった。 ジュゥゥ・・・ボゥワッ! そして、次女れいむがおにいさんに近づき、声をかけると同時に、 その頭に松明の火が押し付けられた。 「ぴぃうっ?・・・ぴ・・・」 妹れいむは、か細い悲鳴をわずかにあげてころころと2、3回転がると、そのまま炭になって動かなくなった。 「・・・・・・むきゅぅぅうう、みんなにげてぇぇえええ!!」 突然の光景に、ここにいた全てのゆっくりが考える事を止めたかのように茫然となった中で、 長ぱちゅりーの叫びが静寂を切り裂いた。 「ゆ、ゆわぁぁああ!おちびちゃんたち、ちぇんのおくちにはいってねー!」 「むほぉおお!むほ、むほぉっ!」 「みんな、はやくまりさのおぼうしにはいるのぜ!にげるのぜぇええ!!」 「めらめらしゃんは、ゆっくちできにゃいぃぃ!」 「ゆぴぁああん!おにぇーしゃんのおくちに、ゆっくちはいりゅよ!ゆっくち!!」 「ゆっくちー。おくちのなかなら、あんしんだにぇ!」 長の叫びは、群れの全員を自失の状態から現実に返すことに成功した。 保育ゆっくり達は、自分達のお口に赤ゆっくり達を入らせていく。 子供達をお口の中に入れるこの行動は、ゆっくり達が自分の子供達を危険から守る時に行う、本能的行動だ。 親のお口の中に赤ゆっくりを入れることで、 外敵から隠す・親の体を外敵からの盾にする・逃走が必要な時はそのまま赤ゆっくりを連れていく、 といった効果を無意識に狙って生まれた本能なのであろう。 「むきゅっ、みんな!おちびちゃんをおくちにいれたら、はやくここからにげるのよ!!」 「「「ゆっくりりかいしたよ!!」」」 そしてお口に、近くにいた赤ゆっくり達を数匹づつ入れた保育ゆっくり達は、 長ぱちゅりーの指示に従って広場から飛び出していったのであった。 お口に赤ゆっくりを満載したせいで、這うように遅い歩みではあったが。 長ぱちゅりーはその間にも、次の指示を補佐まりさに出す。 「むきゅ、まりさ。まりさはみんなのおうちをまわるのよ! ここにきてないおちびちゃんたちを、はやくにがしてあげて!」 「ゆっくりりかいし・・・ゆゆっ!?ぱちゅりーはどうするのぜ!?」 「ぱちぇは・・・にんげんさんと『こうしょう』してみるわ!」 長ぱちゅりーは、最も危険な任務を自分に課すつもりだった。 「そ、そんなのあぶないのぜ!いっしょににげるのぜ!!」 「ぱちぇのあんよじゃ、まりさのあしでまといよ! それに、おはなしするのは、ぱちぇはむれでいちばんじょうずだわ! まりさはまりさの、ぱちぇはぱちぇのできることをするのよ!むきゅんっ!!」 「ゆ、ゆ、ゆっくりりかいしたのぜ・・・にげきったら、またすーりすーりしようなのぜー!」 ぱちゅりーはその弁舌をもって人間と交渉を、まりさはその脚力とリーダーシップをもって群れの避難誘導を、 お互いに能力を生かして最善の役割を果たそう、長ぱちゅりーはそう言って補佐まりさを説得した。 だが、それは半分正しく、半分嘘だった。 長ぱちゅりーは自分が生き残れない可能性が高いと理解しながら、 みんなが逃げる時間を稼ぐためにここに残ったのであった。 ・・・そして、もちろん補佐まりさもそれを察していた。 「むきゅ!にんげんさん、ぱちぇたちは、ここでゆっくりしてるだけよ! もしなにかめいわくをかけたなら、あやま『ジュゥゥウウウウウ』びゅ・・・」 結局、長ぱちゅりーは時間を5秒も稼げなかった。 長ぱちゅりーは顔面だけを松明で軽く炙られ、目と口だけを潰されたまま死ぬ事も出来ずに放置されて、 群れの崩壊する悲鳴を最後の最後まで聞き続けることになったのである。 お口に赤ゆっくりを入れて広場から逃げ出した保育ゆっくり達も、 その這うような鈍足のせいで早々に追いつかれ、近場の木の洞に逃げ込むのがやっとだった。 「むほぉおお!ぷっくー!!」 「ありしゅおにぇーしゃん、がんばっちぇー!」 「ゆっくちまもってくれちぇ、ありがちょー。」 保育ありすは、もはや逃げ切れない事を悟り、近場の木の洞に赤ゆっくり達を放り込むと、 その入り口を塞ぐようにぷくーっして赤ゆっくり達を守っていた。 隙間なくぷくーっで塞がれたその入り口からは、人間さんの手どころかイモムシ一匹も入る事はできないだろう。 そこに松明を持った人間さんが近づく。 「むほぉ!ぷっくー!!」 どむっ。 ジュゥゥゥゥウウウ。 「む・・ほごぉ・・・とか・・いば・・・・・・」 人間さんと向かい合った次の瞬間には、保育ありすのまむまむを松明が貫いていた。 せめてもの救いは、ありすの中枢餡がその一撃で砕かれ、ほとんど一瞬で絶命出来た事だろう。 ジュゥゥウウウウ!ボゥワッ!ジュジュジュウウ! 「ゆぴゃぁああん!あちゅい、あちゅいぃいいい!!」 「どうしてめらめらしゃん、はいってくりゅのぉおお!?こっちこにゃいでぇぇえ!」 「ありしゅおにぇーしゃん、どうしちぇ、たしゅけちぇくれにゃ・・・『ボゥッ』ぴぅっ!」 松明の先端はありすの体をやすやすと突き破って、木の洞の奥まで届いていた。 ありすには、逃げ場のない洞の中で焼き尽くされるおちびちゃん達の悲鳴が、聞こえていただろうか。 保育みょんとちぇんも、人間さんに追いつめられていた。 2匹は背後の木の根元に10匹ほどの赤ゆっくり達をかばいながら、周囲を人間さんに取り囲まれている。 もはや逃げ道を作るには、人間さんと戦って包囲を破るしかなかった。 「みょぉおん!みょんがこのけんで、みちをつくってやるみょん!みょっ!!」 ぶんっ!ひょい。ぶんっ!ひょい。 鋭く尖らせた木の枝を振りまわしながらみょんは包囲に突撃したが、 その木の枝の一撃一撃は、人間さんにあっさりとかわされる。 「がんばっちぇ~!みょんおねーしゃーん!」 「ゆっくちまけにゃいでー!」 「みょぉおおん!げんきひゃくばいだみょん!!みょっ!」 声援に力づけられさらに攻撃を続けるみょん。 だが、何回か突撃を続け、もう一撃、そう思った時、ふとみょんは後頭部の熱に気づいた。 「みょ・・・」 「「ゆぴゃぁぁああん!みょんおにぇーしゃぁああん!!」」 メラメラメラ・・・ 人間さんは、みょんの攻撃を軽くかわしながら、その松明をみょんの髪の毛にかすらせていた。 そして、みょんがその熱に気づいた頃には、みょんの髪の毛はほとんど全体が炎に包まれていた。 「みょぉぉ!?ぉおお・・・!!」 ゆっくりは、特にその皮膚や髪の毛は燃えやすい。 みょんが高熱の中で、自分がもうすぐ走る事も、 声を出す事も出来なくなる事を悟るまで、それほど時間はかからなかった。 だから、みょんはその最後に残された力全てを、おちびちゃん達への叫びに注いだ。 「お、おぢびぢゃんだち・・・にげでぇぇえええ!」 「みょ・・・?」 だが、そんなみょんを処理済みと判断した人間さんは、 その時すでに赤ゆっくり全員を火だるまにし終えていた。 「ぴょ・・・ぴ・・・」 「あちゅ・・・ぴぃ・・・」 「やめちぇぇぇええ!めらめらしゃんこわい『ボウッ』ぴ・・!ぴゃ!?・・・」 「みょ・・ん・・・」 「おぢ・・び・・・・・・」 ちぇんはみょんの死にざまを見て、すでに戦意も保育役としての誇りも失っていた。 目の前でおちびちゃん達を焼き尽くされるのを茫然と眺めながら、よろりと仰向けになり、腹を人間さんに見せる。 これは、ゆっくりの全面降伏を意味していた。 「だ、だずげでよー・・・。ちぇんはむていこうだよー、わかるー・・・?」 もちろんそんなことどうでもいい人間さんは、ちぇんの腹のど真ん中に松明を押し付けた。 たっぷり一分ほどかけて、ちぇんは炭になった。 一方その頃れいむ一家は、補佐まりさに先導されて群れの避難場所に向かっていた。 その集団は、生まれたばかりでベッドからも這い出られないような幼い赤ゆっくりと、 その母ゆっくり達でほとんどを占められていた。 「みゃみゃー、どこいくにょ?ゆっくち!」 「とってもゆっくりできる、あんぜんなところだよ。ゆっくりあんしんしてね。」 「ゆぁーい!みゃみゃのおくちのなか、ゆっくちしちぇるにぇ!ゆゆぅ~ん。」 母ゆっくり達は、赤ゆっくり達をお口の中に入れ、 なるべく自分達の不安を伝えないように話しかけながら這い進んだ。 そんな中、れいむ一家の母れいむが、決意を固めた表情で補佐まりさに話しかけた。 「まりさ・・・れいむは、おちびちゃんをさがしてくるよ!」 母れいむは、保育みょん達に預け、広場に遊びに行かせた次女れいむを諦めることができなかったのだった。 たとえ自分の身を危険にさらし、残り2匹のおちびちゃんが母親を失うことになってしまうかもしれないとしても。 「な、なにいってるのぜ!?れいむ!!」 「みょんたちがいるからだいじょうぶだとおもうけど・・・やっぱりむかえにいかないと・・・」 補佐まりさも、群れで最初に焼き殺されたのが、このれいむ一家の次女れいむだと言うことにまでは気づいていない。 だから、母れいむを止めるのに躊躇してしまった。 「まりさ、おちびちゃんたちをよろしくね!おちびちゃん!れいむはすぐもどってくるからね!いいこにしてるんだよ!」 「おかーさん!はやくかえってきてね!ぜったいだよ!」 「ゆっくち、いってらっしゃいなのじぇ!」 「ま、まつのぜ!れいむー!!」 そして、補佐まりさは母れいむを止め損ねてしまったのであった。 ぐしゃ。 母れいむは、変わり果てた次女れいむの姿を目にすることは無かった。 木の影から不意に顔を出した人間さんに、すれ違いざまに松明を振り下ろされ、 一撃で顔面を砕かれて息絶えたからである。 ------------------------------------------------- 母れいむとの永遠の別れの後、補佐まりさに先導されたれいむと末っ子まりさは、 群れの生き残り達と一緒に大きな洞窟へと避難していた。 人間さんでもすっぽり入れるほど大きな広い洞窟。それが、群れであらかじめ決めていた緊急時の避難場所。 他にも人間さんの目をかいくぐった生き残りがいれば、全員ここに集まってくるはずであった。 洞窟の中には、れいむと末っ子まりさ、補佐まりさの他には、 10匹程の母ゆっくりと、その幼いおちびちゃん達が一家族あたり4~5匹づつ。 それが全てである。 「ゆぅーん。このどうくつしゃん、ゆっくちしちぇないよぉ。」 「ごめんね、ちょっとがまんしててね。」 「みゃみゃー、おなかすいちゃよぉ。むーちゃむーちゃさせちぇにぇ。」 「いまは、ごはんがないんだよ。ちょっとだけがまんしててね。」 洞窟の中では生き残りのゆっくり達が、不安をまぎらわそうと、寄り集まってお話をしていた。 れいむ姉妹も例外ではなく、補佐まりさにぺったりくっついて、お話をしている。 「おきゃーしゃん、おそいのじぇ。」 「ゆぅぅ、きっともうすぐもどってくるよ。まりさもがまんして、ゆっくりまとうね。」 「そうなのぜ。きっとだいじょうぶなのぜ。」 ばさっ。 その時、洞窟内の地面全体を覆うように、網がかぶせられた。 「ゆわぁぁああ!?なんなのこれぇぇええ!!」 「ゆっくちうごけにゃいー!みゃみゃー!」 「な、なんなのぜ!このあみさんは、なんなのぜぇぇ・・・え?」 網の向こうには、人間さんが立っていた。 最初から、全ては人間さんの計画通り。 ゆっくりの行動、子連れならどのくらいの速さで逃げるか、 そして、このゆっくりプレイス内で最後に逃げ込むとすれば、それはどこか・・・ ・・・全てを計算した上で、逃げ込みやすく捕まえやすい、適度な広さの洞窟を用意していたのだった。 その後、網に捕まった群れの生き残りのうち、赤ゆっくり達は卵パックのような容器に優しく分別され、 母ゆっくり達はダンボールに乱暴に突っこまれて、最初に襲撃に遭った広場のど真ん中まで連れてこられた。 「ゆぅ・・・ゆぅぅ~、にんげんさん!いもーとを、すえっこまりさをかえしてね!」 「ゆんやぁ~ん。ゆっくちできにゃいのじぇ~。」 れいむ姉妹もまた、離ればなれにされていた。 れいむはダンボールの中に、末っ子まりさは卵パックの中へと。 そして、広場のど真ん中にはたき火が作られ、その上には水を張った、炊き出し用の大鍋が湯気を上げている。 れいむは実際に火を見た事などなかったのだが、メラメラと輝くそれと、白い湯気を上げる鍋が、 とてつもなく不吉な物に見えていた。 ちゃぷちゃぷちゃぷっ・・・ 「ゆわーい!みずあびしゃんは、ゆっくちできりゅにぇ!」 「ゆっくちー!」 そんな不安をよそに、赤ゆっくり達の方からきゃっきゃと楽しそうな声が聞こえてきた。 何事かと見てみると、人間のおねえさんが、ボウルに張った水で赤ゆっくりを丁寧に洗ってあげているのが見える。 「ゆ、ゆぅう!!そうだよ!おちびちゃんたちは、ゆっくりできるんだよ!ゆっくりさせてあげてね!!」 「おねーさん、ありがとー!」 「ゆわぁ~。おちびちゃんたち、ゆっくりしてるよぉ~。」 補佐まりさとれいむを除く母ゆっくり達は、みんな自分達のおちびちゃんが嬉しそうに水浴びしているのを見て、 早くも先ほどまでの恐怖を忘れて、ゆっくりし始めていた。 だが、それも人間さんが、赤ゆっくり達全員をキレイに洗い終わるまでのことだった。 「こーりょこーりょ、ゆっくちー。」 「ぷりゅぷりゅぷりゅっ!しゅっきりー!」 水浴びを終えた赤ゆっくり達は清潔な布巾の上に乗せられ、 赤ゆっくり達はこーろこーろ、ぷーるぷーるして水分を切っていた。 そうしてみんながすっきりーとした表情でゆっくりしていると、 先ほどのおねえさんが、何やら変わった手袋を両手につけて、 手近にいた赤れいむをつまみあげる。 「おしょらとんでるみちゃーい!」 そして、手袋をつけた両掌で包み込むと、 ごしっ・・・ごしっ・・・ 2回ほど揉んだ。 「ゆっぴ?ぃぃいいいいあぁああああああ!?」 おねえさんが手のひらを開けると、そこには髪の毛と薄皮がきれいに削り取られた、 スベスベ真ん丸饅頭の『元』赤れいむがいた。 「いぢゃぁぁああいぃぃ!!みえにゃい!いぢゃい!?みゃみゃぁぁあああ!!」 その皮膚はムラなく薄皮がこそぎ取られ、まぶたと目玉の表面も削り取られている。 髪の毛もお飾りも、薄皮と一緒に手袋の中に残っていた。 「「「ど、ど、どうぢでぞんなごどずるのぉおおおお!!」」」 そのおねえさんが付けていた手袋は、ゆっくり用皮むき手袋。 表面がやすり状になっており、野生ゆっくりの汚れた皮膚や髪の毛などを削り取るために作られたものだった。 森に響き渡る悲鳴は、おねえさんが手をごしごしと揉むたびに大きくなっていった。 「ゆびゃぁあぁああ!!やべぢぇええええ!!」 「おぎゃあぢゃあああん!!」 「みえにゃい!みえにゃいよぉおお!!いぢゃぁぁあい!!」 数十匹の赤ゆっくり達が、あっという間にスベスベの薄皮饅頭になっていく。 それはゆっくり達にとって、まさしく地獄の光景だったであろう。 悲鳴を上げつづける母ゆっくり達に混じり、れいむも必死に叫び続けた。 そんなれいむの視界に、れいむの良く知る、世界で最も愛する存在の姿が映った。 「おにぇーぢゃん!たしゅけちぇぇぇええ!!」 「まりさ!ゆ、ゆぁあああん!!おねーさん、やべで、やべであげでぇぇええ!!」 末っ子まりさの順番は、赤ゆっくり達の中で、一番最後だった。 「いやなのじぇ、だじゅげ」 ごし・・・ごしっ・・・ そして、集められた赤ゆっくり達は、一匹残らず薄皮饅頭になった。 「ゆぴゃぁあああ!!ゆっぐぢでぎにゃい、ゆっぐぢでぎにゃいぃぃいい!! おぎゃーしゃん、おにぇーじゃん!ゆびゃぁぁああああ!!」 「どうぢで・・・どうぢでぇ、ゆっぐぢぢでだのにぃ・・・」 れいむは、可愛い末っ子まりさを、守りきることが出来なかったのだった。 『元』赤ゆっくり達の悲鳴が周囲に響き続ける中、 母ゆっくり達は、自分達のおちびちゃんの、あまりにも痛ましい姿に、 泣き叫ぶ気力も残されておらず、ただすすり泣くように懇願し続けた。 「もうやべで・・・ゆっぐぢぢで・・・」 「おちびちゃ・・・ぺーろぺーろさせてぇ・・・」 その様子を気にしているのか、母ゆっくり達にはおねえさんの表情からはなにも読みとれなかった。 そして、おねえさんは薄皮饅頭を数十個乗せたおぼんを持ち上げると、 たき火の上でクツクツと音を立てる大鍋の前に運び、 じゃぽじゃぽじゃぽっ おぼんの中身を大鍋の中に落としていった。 「「「ゆっぴゃぁぁあああああああぁぁぁぁ・・・・・こぽ・・・こぽ・・・」」」 「「「おぢ・・・おぢびぢゃ・・・」」」 赤ゆっくり達は、一匹残らず大鍋の湯の中に溶けて消えていった。 ダンボールに入れられたゆっくり達は、それからしばらくの間放置された。 母ゆっくり達の詰め込まれたそのダンボールには、 赤ゆっくり達からこそぎ取られたお飾りや、髪の毛も放り込まれていた。 母ゆっくり達は、自分のおちびちゃん達の、お飾りと髪の毛をぺーろぺーろして泣き続ける。 だが、やがてたき火の火が弱くなったところで、そのダンボールから完全に気力を失った補佐まりさが取り出された。 「ゆ・・・やべで、やべでぐだざい・・・もういいでじょ・・・あとのみんな・・・ だずげでください・・・ぱちゅりーにやぐぞぐぢだんでず・・・だずげるっで、みんなだずげ」 ひょいっ・・・ボゥッ 「ゆぁぉ・・・」 補佐まりさは、一瞬で火の中に消えていった。 「やべでぇぇえええ!!」 「もうやぢゃ、もうやべぢぇ、ゆびゃぁぁあああ!」 それから間もなく、可愛いおちびちゃん達の物だったお飾りごと、母ゆっくり達はたき火に投げ込まれていった。 「どうぢで・・・どうぢでぇ・・・ゆっぐぢ、ゆっぐぢぃ」 最後に残されたのは、子ゆっくりだったためダンボールの中で一番小さかった、れいむだった。 ひょい。 恐怖と絶望で体が動かなくなっていたれいむは、逃げる事もできず、人間さんにあっさりつまみあげられた。 「おねえざん・・・どうぢで・・・?」 れいむは、すでに生を諦めていた。 ただ、それでも、どうしても質問せずにはいられない疑問があった。 れいむは、恐怖で震える口から、必死で声を絞り出したのだった。 「どうぢでごんなごどずるの・・・れいむたち・・ゆっくりしてただけだよ・・・?」 ひょいっ・・・ボッ そしてれいむは、疑問に対する答えを最後まで得ることなく、たき火の中に放り込まれて炭になった。 それから数分後、 ゆっくりの楽しげな声が消えた、かつてのゆっくりプレイスには、 美味しそうなお汁粉の鍋と、それを囲い談笑する人間さん達だけが残された・・・
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/2978.html
『ゲスって何?』 2KB 愛で 小ネタ 日常模様 飼いゆ 現代 愛護人間 ゆっくりしていってね! はじめまして。拙文ですが、ゆっくりしていってね! 『ゲスって何?』 ある冬の休日、安アパートの一室で、一人と一匹がコタツで暖をとっていた 「なぁれいむ、ゲスっていったい何なんだ?」 不意に、男はコタツの中で惰眠を貪るれいむに問うた。 誰にでもある、ふと思いつくような疑問。 退屈を紛らわせるにはもってこいだったのだろう。 そんなどうでもいいようなどうでもよくないような質問に、れいむは眉をキリッとさせ、 「れいむのじゃまをするのはだれでもげすだよ!(キリッ れいむかしこくてごめんね!」 「うん、お前に聞いたのが間違いだったわ」 男が呆れた様子で足を器用に使い、れいむをコタツから押し出した。 安アパートでしかも通常種のゆっくりと暮らしているだけあって、裕福な生活を送っているようには見えない。 当然それらしく、部屋にはコタツ以外の暖房器具は一切無い。 「ゆぅぅぅ!?さむくてゆっくりできないよ!おにーさん!れいむをあしでおさないでね!おねがいだよ!」 コタツの中は天国でも、その外は室内であるのにも関わらず室外気温と同じくらい寒い。 窓の外では、排ガスで茶色くなった雪が音も無しに閑静な住宅街へ降り積もっている。 雪を掻き分け真っ白な道路を進む除雪車のエンジン音以外は何も聞こえないこの部屋の静寂を破るかのように、 れいむがいわれの無い――れいむが勝手に思っているだけなのだが――暴力の行使に抗議する。 「おにーさんいじわるしないでね!れいむぷくーするよ!ぷくー!」 目尻に涙を溜め、元からふっくらとしている頬をさらに膨らませる霊夢を見て、男はもう一つ疑問が浮かんだ。 「れいむ、今俺はれいむの邪魔をしているわけだが、これはゲスに当てはまるのか?」 れいむを足で弄くりながら、悪戯じみた笑みを浮かべながら男がれいむに問う。 対するれいむは、 「ゆ?おにーさんはおにーさんだよ!でもいじわるさんはゆっくりできないよ!はやくやめてね!」 意外で、それでいてれいむらしい答えに男は、はははと快活に笑い、れいむをコタツの中へと引き入れた。 れいむも男と同じように、 「ゆ~、おにーさんゆっくりありがとう!こたつさんはゆっくりできるね!」とコタツの中で元の笑顔を取り戻す。 一人と一匹の休日は、こうしてまったりゆっくりと過ぎていくのだった。 えんど 「ヤマもオチも意味もねぇなこのお話」 「ゆ?おにーさんだれにしゃべりかけてるの?」 「なんでもない、気にするな」 「ゆっくりりかいしたよ!」 挿絵:
https://w.atwiki.jp/inmasaitan/pages/33.html
概要 カード名 コスト/ATK/Life 山羊の群れ 1/0/1 タイプ/属性 汎用能力 守護者/自然/獣 なし 能力1 カードID 場に出たとき、『山羊』を2体自陣に生成する。 GD010
https://w.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/45.html
225 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04 02 48 ID vvg88tHe 寿司が食いたい。 綾瀬喜十郎は、風呂場の、もうもうたる湯気の中で、何故か唐突にそう思った。 回る寿司でもいい。 回らない寿司なら、なおいい。 かねは、ある。 先週、こっそり馬で当てた二万が、まだそのまま残っている。 この金の事を妹たちに知らせる気は当然、無い。奴らがその金の存在を知れば、たちまちの内に没収されてしまうからだ。 “うちの家計はいま、苦しいんですのよっ” の一言で。 幸い、晩飯もまだだ。腹も減っている。 そう思ったら、矢も盾もたまらず食べたくなってきた。 ――はまち、うなぎ、たい、甘えび、納豆巻き。赤だしも飲みてえなぁ……。 喜十郎は、洗面器で湯舟から、その熱い湯を自分の顎にぶちまけた。 泡はもう残っていない。 ヒゲの剃り跡がちりちりするが、彼は気にせず、湯船に身を沈めた。 熱めに沸かし直した湯が心地いい。 髪は洗った。 身体も洗った。 ヒゲも剃った。 後は身体をあっためて、あがるだけだ。 寿司食いてえなぁ 彼は、心中に再び、そう呟いた。 しかし、彼は知っている。 結局、自分は寿司を食べに行く事は出来ないだろう、という事を。 この我が家に於いて、自分に、そんな自由は与えられていないという事を。 すなわち――。 「――お兄様、お背中を流させて頂きます」 扉がからりと開くと、胸元をかろうじてバスタオルで隠した、全裸同然の少女たちが風呂場に入って来た。 一人ではない。 五人だ。 年齢はまちまちだが、そのいずれもが美しい。もしくは美しく育つであろう、そう思わせる美少女たちであった。 彼の――喜十郎の妹たちであった。 226 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04 04 26 ID vvg88tHe 無論、彼は、この風呂場への闖入に、何の許可も与えていない。 しかし、この少女たちは、なんのためらいも無く、まるで当然の義務を果たす者のように、兄の眼前に肌を晒し、兄が浸かる湯船から湯をすくい、身体に浴びる。 それでも、少女たちの一人は、兄の一目瞭然な不機嫌さに、やや怯えた様子を見せる。 「あの、お兄ちゃま、やっぱりその、勝手に入ってきて……怒ってる?」 喜十郎は、半ば諦めたように苦笑いを浮かべ、泣きそうになっている妹の一人に応えてやった。 「……とにかく、取りあえず湯に入れ。風邪を引く」 「あっ、はいっ!」 彼女たちの中に一種、ほっとした空気が流れたようだ。 基本的には、いかに傍若無人な彼女たちとはいえ、妹たちは妹たちで、やはり兄の機嫌は気にしていたのだろう。 「それでは失礼いたします」 そのまま彼女たちは、無駄に広い湯舟に、次々にその肢体を沈め、年頃の少女らしい雑談を交わし始めた。 喜十郎は、そんな妹たちの様子を見て再び溜め息をついた。 「――桜(さくら)、ちょっといいか」 「はい?」 彼女たちの中でも一際長身の少女が、その声に振り向く。 ツインテール、というのだろうか。腰まで伸びた栗色の長髪を左右に分け、両方の肩口で結わえ、垂らしている。そんな子供っぽい髪型と、大人びた相貌が生み出すアンバランスさが、彼女に絶大な魅力を与える効果をなしていた。 その頬が淡く桃色に染まっているのは、決して熱めの湯のせいだけではない。 喜十郎の声音は、そんな彼女の期待には、まず添わないであろう険しさを含んだものであったが、――桜と呼ばれた彼女の表情には、それを残念がる気配は微塵も無く、ただ、彼に声をかけられた、という事実が嬉しくてたまらないようであった。 「昨日言ったはずだな。今後の俺の入浴には、介添えは一切無用だ、と」 「ええ」 「なら、何故ここにいる」 湯舟の隅で、自らの背を壁にして他の妹たちに聞こえないように一応、気を遣う。 この質問を、何故この場にいる妹たち全員ではなく、桜個人に問うのかと言えば、この桜こそが、綾瀬家の六人姉妹の長姉であり、どんな時でも常に彼女たちの音頭を取る役割を担っているからだ。 「本当に分からないの? ――全く、お兄様ったら……」 227 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04 05 23 ID vvg88tHe まただ。 桜から“お兄様”と呼ばれるたびに、喜十郎は、何とも言えないむず痒さのような感覚を背中に感じる。 実際、喜十郎と桜は、半年しか誕生日が離れておらず、学校でも共に同じ教室で、机を並べて授業を受けている。だから、そんな桜が自分の事を“兄”呼ばわりするのは、喜十郎にとって、かなり奇異に感じられる行為だった。 その感覚は、無論、今でも変わっていない。 湯気の中でうつむいたその美貌に拡がったのは、嘲笑、とでも言うべき表情だった。 「簡単よ、お兄様に理解してもらうためよ」 「理解?」 桜は自分の唇を、れろり、と舐めた。 その真っ赤な舌と、唇の端からこぼれ落ちる一筋の唾液が、たまらなくいやらしい。 もう、さっきまでのひそひそ声ではない、風呂場にいる全員に聞かせる声だった。 いまの桜は、まぎれも無い、ここにいる妹たち全員の利益代表として、兄と交渉しようとしているようだった。 「お兄様は、これでも由緒正しき綾瀬家の時期当主。常に身だしなみには気を遣ってくれないと、私たちの恥にもなるわ」 音すら立てずに桜が湯舟から立ち上がる。 その背後には、さっきまで雑談していたはずの四人の妹たちまでが、無言でこっちを見ていた。桜と同じく、年齢に似合わぬ潤んだ光をその目に宿らせて。 「だから私たちが、お兄様を綺麗にするの。私たちに出来る範囲でね」 喜十郎の両頬に手を添え、熱のこもった目線で彼を見下ろし、桜は兄に訴える。 「すまないが、俺はそこまでガキってわけじゃない。自分の身体くらい自分で洗える」 喜十郎は、何かから逃れるように桜の手を払うと、湯舟から立ち上がった。 「今日だってもう、洗うべきところは洗い終わったよ。当然、背中もな」 捨て台詞のように言い放つと、振り向きもせずに彼は湯舟から出た。――はずだった。 228 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04 07 49 ID vvg88tHe 湯舟の敷居をまたいだ瞬間、喜十郎はひっくり返って湯舟に落ちた。 彼の重心が片足に移った瞬間、桜が喜十郎の手首を引っ張ったのだ。 「あらあら」 兄を湯舟に沈めてなお、涼しい顔で桜は妹たちを振り返る。 「私には洗い終わってるようには見えないのだけれども……みんな、どう思う?」 「そうですわねぇ。確かに、兄君さまのお背中は、まだまだ垢が残っておられるようにお見受け致しますわ」 ポニーテールにくくってなお、桜と同じく、ほとんど腰まで隠れる長髪の少女――春菜(はるな)が、長姉の問いに歌うように答える。 「うん。ぴっかぴかに洗えば、お兄ちゃまはもっともっと綺麗になるって詩穂も思うなっ」 肩のあたりでこざっぱりと切り揃えられたショートカットの少女――詩穂が、ポニーテールの姉に調子を合わせる。 「くしししし、うん。ヒナもヒナもそう思うっ」 五人の妹たちの中で一番幼い少女、いや幼女か?――比奈(ひな)までもが、きらきらと輝く瞳を兄に向けていた。さっきまで遊んでいた船の玩具には、もはや一片の興味も残っていないようだ。 「大丈夫ですか兄上様。お湯は飲まれてはおられませんか?」 桜や春菜同様、腰まで伸びた長髪の少女――真理(まり)が、喜十郎に寄り添い、気遣う。もっとも、彼女の髪型はポニーテールではなく、その圧倒的な量の黒髪を三つ編みにまとめている。 「ああ、ありがとう。真理」 喜十郎にとって姉妹の中では、この真理こそが一番気の置けない存在であった。 「でも――」 ただし、 「兄上様のお体で洗い残しがあるのは、どうやらお背中だけでは無さそうですわ」 「真理……!」 一度スイッチが入ってしまえば、この真理という少女は、姉妹の中で一番の残忍性を発揮する、サディスティンに変貌するという欠点があったが……。 229 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04 09 17 ID vvg88tHe 「五対一。民主主義の勝利ね」 いつの間にか彼の背後に忍び寄った桜に反応して、思わず立ち上がった喜十郎の背を、春菜が羽交い絞めにする。 「くっ、放せ春菜っ!」 「みなさん、用意はよろしいですかっ?」 「いつでもいいわよっ」 妹たち全員の位置を確認するように、桜が素早く視線を走らせ、そのまま叫ぶ。 そして、その声に呼応するように少女たちが各々、配置につく。 まるで手馴れた作業をするように、その動きには迷いが無い。 詩穂は喜十郎の右手を。 真理は喜十郎の左手を。 比奈は喜十郎の股間を。 春菜は喜十郎の背中を。 そして桜は、そのまま喜十郎の正面に自らの身体を預け、その豊満な乳房を押し付ける。 いかに男女に体力差があったとしても、五対一では所詮、勝負にはならない。 喜十郎は、全身を妹たちの肉の檻に封じられ、微動だに出来なかった。 「放せっ! 放せっ! 放せぇぇっ!!」 「いやですわ」 かぷり。 「――っ!!」 春菜が、背後から彼の耳朶を甘噛みする。あたかも捕らえた獲物の悲鳴を塞ぐかのように。さらに次の瞬間、桜が、だらしなく開けた喜十郎の唇を文字通り塞いでしまう。無論、花びらのような自らの唇で、である。 「ああ~~~っ、桜ちゃんずるぅいっっ! 詩穂もお兄ちゃまとキスしたいぃぃ~~~」 「ふふふ……詩穂ちゃんもあまり、がっつかないで下さいまし。兄上様のお体がどこでも美味なのは、あなたもご存知でしょう?」 そう言うと、真理は兄の左乳首に舌を這わせる。 「――っっっ!!」 もとより口を塞がれた兄の悲鳴は、真理のいやらしい囁きと桜のキス、さらには彼の耳朶にしゃぶりつく春菜の口舌音によって、簡単にかき消されてしまう。 「んふふふ……ほんと、美味しゅうございます、兄上様……」 「ああっ! じゃあ、じゃあ、詩穂もぉ!」 その上で、今度は詩穂の舌が、彼の右乳首に襲い掛かる。 「んぐっ! ふぐっ! んんんんっ!!」 230 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04 11 17 ID vvg88tHe 二つの乳首と耳朶、さらに舌をしゃぶり尽くす情熱的な接吻。 妹たちが風呂場に闖入してきた時点で、例えこうなる事は予想していたとしても、やはり喜十郎の陽根は、硬く膨れ上がってしまった。――最も幼い末の妹、比奈の眼前で。 「くししし。それじゃあ、おにいたま、一番気持ちのいいところ、ヒナが責めてあげるね」 何度、快楽の中に身を浸そうとも、この瞬間だけは――この屈辱だけは慣れる事が出来ない。少女どころか幼女と呼ぶに相応しい末の妹に、自分のペニスを弄ばれる、この瞬間だけは。 いや、比奈だけではない。 この少女たちは、自分を責める上で、まだ全然、本気になっていないのだ。 何度も何度も彼女たちに、この身を嬲りまわされていた喜十郎には分かる。 その証拠に――。 「ねえ桜さん、今日の“ノルマ”はどのくらいになさいます?」 耳朶から口を放した春菜の言葉に、桜も応えるように兄の舌を解放した。 「そうねえ、……二時間ってところかしら」 にっ、にじかんっ!? 喜十郎は、真っ青になってふるふる、ふるふると首を振る。 そんな彼を見て、桜は慈しむような、とびっきりの笑顔を浮かべる。 そして、自由になった喜十郎の唇に、今度は右側から詩穂が跳びつき、深く己の舌を絡ませる。 ノルマとは、即ち妹たちが兄を責める時間的・回数的条件である。 六人の妹たちが常時身辺に付きまとう彼にとって、時間・回数に制限を定めない性交渉は、彼の日常生活に支障をきたす可能性があり、それゆえに彼女たちは“ノルマ”という形で、互いに歯止めを掛け合っていた。 しかし、やがて“ノルマ”は変質し、いまや妹たちが集団で兄を弄ぶ際の、単なる指針と化してしまっていた。 「二時間は長いですわ、桜ちゃん。せめて一時間で切り上げないと、折角の深雪(みゆき)ちゃんのお料理が冷めてしまいますわ」 「あっ、それ確かにまずいよぉ。深雪ちゃんって普段やさしいけど、怒ったらすっごく怖いんだよぉ。ヒナ、一度怒られたことあったもん」 231 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04 12 15 ID vvg88tHe 深雪とは、詩穂の姉にして真理の妹。つまり、この場にいない六人目の妹のことである。 現在、彼女は厨房で家族全員分の夕食を調理している最中であり、十代前半にして、己の料理の味が落ちる行為を何よりも嫌う、こだわりの料理人であった。 もっともそれは、喜十郎に関する好意の量が、他の姉妹に比較して少ないという意味では決してない。 彼の身体を愛撫するのと同次元で、彼に食べさせる愛情料理に精魂を傾ける、というだけの話であり、要は他の姉妹たちと、その人間的本質は何ら変わらない少女なのだ。 「では桜さん、今回の“ノルマ”は一時間ということで宜しゅうございますか?」 「……仕方ないわねえ。不本意だけど今日のところはこれで勘弁してあげる」 「良かったですわねえ兄君さま。桜さんの優しさに、きちんと礼を言わねばなりませんよ」 そう言いながら春菜の指が、背後から喜十郎の肛門に、ずぶりと侵入する。 「――ぃぃぃぃっっ!!」 思わず詩穂から、口をもぎ離して悲鳴をあげる喜十郎。 「ああっ! お兄ちゃまったら、ひどいなぁ、もう!」 温和な詩穂にしてもムッとしたのか、右乳首に爪を立てる。 「そんなひどいお兄ちゃまには、お仕置きだよっ」 「ぁぁぁっ!! いたいいたい詩穂ぉっ!!」 「痛いの? 痛いのはどこなの、お兄ちゃまっ?」 「むねがっ、むねがいたいよぉっ!」 「胸じゃないでしょっ!? なんで教えた通りに言えないの、お兄ちゃまっ!!」 詩穂が、乳首もちぎれよと言わんばかりに、さらに爪に力を込める。 「あああああおっぱいれすっ!! いたいのはおっぱいれすぅっ!!」 「あら詩穂ちゃん、もう兄上様にお仕置きするのですか?」 半分うっとりしながら彼の左乳首を舐めていた真理も、 「仕方ないですわねえ、もう少し兄君さまで楽しみたかったんですけど……」 彼の肛門をほじくり返しながら、背骨に舌を這わせていた春菜も、 「ま、いいじゃないの。これはこれで楽しいんだから。ね、お兄様?」 詩穂の唇が離れた後の、喜十郎の右乳首を責めていた桜も、 「くしししし、わるく思わないでね、おにいたま。ヒナはただ、くーきを読んだだけなんだからね」 亀頭をちろちろと舐めていた比奈も、 一斉に、喜十郎の身体に歯と爪を立て始めた。 「~~~~~~~~~っっっ!!!!」
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/779.html
『ありすの婚活』 D.O 「おにーさん!ありす、このまりさとけっこんするわ!」 「まりさはありすと、ずっとゆっくりするのぜ!」 今日は日当たりもよく、程よい気温で何とも心地いい。 そんなわけで、庭で縁側に座りボーっとしてたら、 薄汚いありすが、さらに汚らしい野良まりさを連れてやってきた。 何やら結婚報告をしているらしいが、 ありすの頭上の茎には、すでに3匹の赤ゆっくりが実っている。 ・・・できちゃった婚じゃねえか。 「で?」 「だから、まりさもかいゆっくりにしてくれなのぜ!」 「ゆっくりおねがいするわ!」 ・・・・・・。 「なんで?」 「だ、だって、ありすのだーりんなのよ?」 「ま、まりさ、とってもゆっくりしてるのぜ?ありすのだーりんなのぜ?」 「いや、だって・・・ありす。お前、俺ん家の庭に、勝手に住み着いただけだろ。」 ・・・・・・。 「そんなのきいてないのぜぇぇええ!?」 「こ、これは、いなかもののじょうだんよぉ!?おにーさん、へんなこといわないでね!?」 「お前みたいに薄汚くて、おまけにバッジもついてない飼いゆっくりが居てたまるか。」 俺からすれば当たり前の事実に対して、茫然とした表情を2匹は見せていたが、 野良まりさの方が多少早く立ち直り、野良ありすに向かってすごい剣幕で怒鳴りつけ始めた。 「・・・うそついたのぜぇええ!!ありすがかいゆっくりだっていうから、まりさはすっきりーしてやったのぜぇ!? まりさのこの、いたたまれないきもち、いったいどうしてくれるのぜぇえええ!!」 「まりさぁぁあ!これはなにかのまちがいなのぉぉおお!!」 「うるさいのぜっ!!もうありすなんて、はにーでもなんでもないのぜ!! ここでひとりで、ゆっくりしてればいいのぜ!!」 「ま、まって、まりさぁぁああああ!!」 野良まりさは、そのまま踵を返し(?)庭からゆっくりらしからぬスピードで走り去っていった。 なんだかんだ言っても、人間と関わる危険くらいは理解していたのだろう。 「まりさ、まりさぁぁ・・・」 そして、捨てられた方の野良ありすはメソメソ泣いていた。 このままほっといてもウザったいので声をかけてやる。 「お前、これで7度目だろ。いいかげん懲りろ。スルメ食うか?」 「おにーさぁん・・・ばたぴーさんがいいわぁ。」 バタピーを2、3粒食べている内に、ありすも多少は落ち着いてきたようだ。 「むーしゃむーしゃ・・・。ありす、『おとこうん』がないのかしら」 「馬鹿にはクズしか寄ってこねえんだよ。」 「むほぉ・・・」 理解したのかしないのかはわからないが(多分何もわかっていないが)、 食事を終えたありすは、心の隙間を埋めるためなのか、 縁側から投げ出していた俺の脚にすり寄ってくる。 「すーりすーり」 「汚ねぇ、べとべとする!すっきりーしてそのまんまのクセに触りやがって! ・・・洗ってやるからタライに水張っとけ。」 「ゆっくりりかいしたわぁ。」 ありすが足洗い場のタライに水を張ってる間に、 洗面所からゆっくり石鹸を取ってきた。 じゃぶじゃぶじゃぶじゃぶ・・・ 「いつものことだか、そのガキ共どうする気だ。」 「・・・おちびちゃんにつみはないもの。ちゃんとうんで、そだてるわ。」 「馬鹿なクセに?」 「むほぉぉおお!?ありすはばかじゃないわ!とかいはなのよぉぉおお!!」 「・・・・・・(意味変わんねえじゃねえか)」 まあいい。 こいつはゆっくり平均と比べても頭がかわいそうなヤツなので、1と複数の区別しかつかない。 パッと見では子供の種類もわからない今日の夜のうちに、黒帽子の方は間引いておくか。 「ふぅむ。・・・ガキの引き取り先もまた探さんとなぁ。」 せめてもの救いは、ありすのガキ共は揃いもそろって馬鹿な上にレイパー気質も無いくせして、 素直で扱いやすいと、引き取ってもらった同僚達に評判がいいことくらいか。 「ゆぅん・・・ありすは『ふこうなおんな』ね。いつか、『うんめいのであい』がおとづれるのかしら。」 「そんな日は一生来ねえよ。不幸なガキが増えるだけだ。止めとけ。」 「・・・むほぉ。」 ホント、野良にここまでしてやるなんて面倒見のいい人間、珍しいぞ・・・まったく。 餡小話掲載作品 その他(舞台設定のみ共有) ふたば系ゆっくりいじめ 157 ぱちゅりおばさんの事件簿 ふたば系ゆっくりいじめ 305 ゆっくりちるのの生態 ふたば系ゆっくりいじめ 854 ごく普通のゆっくりショップ ふたば系ゆっくりいじめ 873 ゆっくり向けの節分 ふたば系ゆっくりいじめ 924 みんな大好きゆレンタイン ふたば系ゆっくりいじめ 934 暇つぶし ふたば系ゆっくりいじめ 943 軽いイタズラ ふたば系ゆっくりいじめ 1016 お誕生日おめでとう! ふたば系ゆっくりいじめ 1028 ゆっくり工作セット ふたば系ゆっくりいじめ 1148 愛でたいお姉さん 本作品 『町れいむ一家の四季』シリーズ 前日談 ふたば系ゆっくりいじめ 522 とてもゆっくりしたおうち ふたば系ゆっくりいじめ 628 ゆきのなか ふたば系ゆっくりいじめ 753 原点に戻ってみる ふたば系ゆっくりいじめ 762 秋の実り ふたば系ゆっくりいじめ 1104 森から群れが消えた日(前編) ふたば系ゆっくりいじめ 1105 森から群れが消えた日(後編) ふたば系ゆっくりいじめ 1134 いつもの風景 『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順・おまけはそうでもない) 春-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 161 春の恵みさんでゆっくりするよ 春-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 154 竜巻さんでゆっくりしようね 春-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 165 お姉さんのまりさ飼育日記(おまけ) 春-2-3. ふたば系ゆっくりいじめ 178 お姉さんとまりさのはじめてのおつかい(おまけ) 春-2-4. ふたば系ゆっくりいじめ 167 ちぇんの素晴らしきゆん生(おまけ) 春-2-5. ふたば系ゆっくりいじめ 206 町の赤ゆの生きる道(おまけ) 夏-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね 夏-1-2. ふたば系ゆっくりいじめ 139 ゆっくりのみるゆめ(おまけ) 夏-1-3. ふたば系ゆっくりいじめ 734 未成ゆん(おまけ) 夏-1-4. ふたば系ゆっくりいじめ 678 飼われいむはおちびちゃんが欲しい(おまけ) 夏-1-5. ふたば系ゆっくりいじめ 174 ぱちぇと学ぼう!ゆっくりライフ(おまけ) 夏-1-6. ふたば系ゆっくりいじめ 235 てんこのインモラルスタディ(おまけ) 夏-1-7. ふたば系ゆっくりいじめ 142 ゆうかりんのご奉仕授業(おまけ) 夏-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 146 雨さんはゆっくりしてるね 夏-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 205 末っ子れいむの帰還 秋-1. ふたば系ゆっくりいじめ 186 台風さんでゆっくりしたいよ 秋-2. ふたば系ゆっくりいじめ 271 都会の雨さんもゆっくりしてるね 冬-1. ふたば系ゆっくりいじめ 490 ゆっくりしたハロウィンさん 冬-2. ふたば系ゆっくりいじめ 910 寒い日もゆっくりしようね 『町れいむ一家の四季』シリーズ 後日談 ふたば系ゆっくりいじめ 132 俺の嫁ゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 148 ここはみんなのおうち宣言 ふたば系ゆっくりいじめ 224 レイパーズブレイド前篇(仮) ふたば系ゆっくりいじめ 249 Yの閃光 ふたば系ゆっくりいじめ 333 銘菓湯栗饅頭 ふたば系ゆっくりいじめ 376 飼いゆっくりれいむ ふたば系ゆっくりいじめ 409 町ゆっくりの食料事情 ふたば系ゆっくりいじめ 436 苦悩に満ちたゆん生 ふたば系ゆっくりいじめ 662 野良ゆっくりがやってきた ふたば系ゆっくりいじめ 807 家出まりさの反省 挿絵:嘆きあき
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3130.html
『くそにんげんに挑んだ結果 前編』 31KB いじめ 自業自得 差別・格差 嫉妬 妬み 追放 番い 群れ 子ゆ 自然界 現代 人間なし うんしー ゆっくりよんでいってね! 放置されて錆び付いた自転車や建物の壁を沿って備え付けられた室外機が路地裏の狭苦しさを印象付ける。 何度も塗り直されゴツゴツと荒い表面を見せるその街路を4匹のゆっくりが後ろを振り向かずただひたすらと駆け抜けていく。 親をれいむ、まりさにして子がそれぞれ同種で1匹づつ、一見すると普通のゆっくりの一家であるが、 その姿は本来ゆっくりが持つべき丸みを帯びたボディーラインとは懸け離れた、酷く歪で痛々しい痕があちこちに刻み付けられていた。 親れいむは全身をまるでクレーターの様に抉った深い窪みを作り不自然に頬から割り箸が突き出ている、 れいむが涎塗れの口を絞って咥えているのは我が子である子れいむの揉み上げ、 その先にぶら下がる咥えられた子れいむは何がおかしいのか嬉しそうにゆぴゃゆぴゃと笑い声を上げて排泄物を緩んだ蛇口みたくボトボトと垂れ流している。 後ろに続く親まりさは全身に酷い火傷を負い体中のあちこちに真っ黒くこびり付いた網目状の焦げを垣間見せ、 上半分を破られ情けなく拉げた帽子を深々と被っている。 窪んだ瞳から止め処なく涙を溢れさせ砂糖水の跡が表情を崩した為に大きな皺を作った頬を浅黒く変色させる。 尖らせた口元にはれいむ同様に娘の子まりさを咥え、焼き付かれた小麦粉の下腹部から昇る香ばしい匂いを感じながら 鈍重な足取りで懸命に前を行くれいむを追っている。 咥えられた子まりさは両目があるべき部分にぽっかりと黒い空洞を作り、 身体が揺れるたびに激痛に苦しみ唇を大きく歪める程に苦痛な表情を浮かべ震えていた。 (どおじで……どおじでれいむだちがごんなめにあわなぎゃいげないの!?……) ふいに脳裏に過ぎった思いがれいむの瞳を濡らす、その思考は完全な悲劇の中にあったがこれらの結果は全て自業自得と言わざるを得ない。 一家は森のゆっくりプレイスから遠路遥々人間を奴隷にするべくこの街にやってきた野生のゆっくりだった。 しかし結果は彼らの身が現す通り散々で、圧倒的な人間の力の前に最愛の娘達を3匹も潰され自身も酷い怪我を負いどうにか逃げ延びてきた有様だ。 敗走兵の如く薄暗い脇道を人間の影に怯えながら逃げるゆっくりの一家は一刻も早くゆっくりプレイスに戻るために走り続けた――。 『くそにんげんに挑んだ結果』 稲作を主産業とし片田舎だったこの街が近代化の歩みを進めたのは、数年前に大手自動車メーカーが大規模な工場を建設した事がきっかけだった。 過疎化の一途を辿っていた街には多くの労働者が集まり、道路は色を塗り替えるが如く整備され、関連企業の施設が次々と建造され、かつての賑わいを取り戻しつつあった。 街の北東部に位置する巨大な樹海も徐々にではあるがその影響を受け始め、 森に住まう野生のゆっくりたちは人の姿を度々目撃するようになり、人間がどういう存在なのか少しづつであるが理解を深めていった。 だが自己解釈と根も葉もない噂話を耳にし、人間は自分たちゆっくりに劣る下等な生物であると間違った知識を得てしまった一部のゆっくりたちが 人間を奴隷にし服従させゆっくりできるご飯と住まいを求め意気揚々と群れを離れていった。 そんな多くの離反者が出て行くことに心を悩ませていた群れの指導者である長ぱちゅりーは 狩りに出掛けていた群れのゆっくりたちが、樹海の入り口で見慣れないゆっくりが休んでいると聞いて重い腰を上げた。 「むきゅー、わかったわ。まずはぱちゅりーがようすをみてくるからみんなはここでまっているのよ」 「ありすもいっしょにいくわ、おさだけじゃなにかあったときにたいへんだわ!」 「だいじょうぶよ、ありすたちもかりからかえってきたばかりでつかれているでしょう?こういうしょりはぱちゅりーにまかせておきなさい」 ありすは心配そうに「でも」と言葉を投げたが、対するぱちゅりーは背を向けた態度で一蹴すると樹海の入り口に向け進む、 西の空を見上げると僅かに赤みを帯び始めている、毎日の日課である集会まで時間も押していたためぱちゅりーは急いで報告を受けた場所へ移動する。 目的の場所に近付くとぱちゅりーはサッと身を木々の陰に隠しながら、報告を受けた場所を凝視した。 どうやら傷だらけの成体2匹と子2匹のゆっくりが荒い呼吸を整えている様だった、ジッと眼を凝らしたぱちゅりーはそのゆっくりたちが つい数日前に人間を奴隷にすると豪語して出て行ったれいむ一家だと気付き、思わず唇を噛んだ。 「むきゅー……あれはれいむとまりさね……やっかいなのがかえってきてしまったわ……」 明らかに怪訝そうな顔をして眉を顰めたぱちゅりーは段差を滑り、れいむ一家の前に姿を現す。 突然目の前に現われたゆっくりに親れいむは一瞬だけびくっと身体を震わせたが、それが群れの長であるぱちゅりーだと気付き安堵して割り箸の刺さった頬を緩ませた。 「お、おさっ!れいむたちかえってきたよ!」 「そのようね」 「ゆ……ゆゆっ?どうしたの?おさのおかおさんがゆっくりしてないよ!」 冷笑を浮かべたぱちゅりーの顔を見てれいむがおずおずと尋ねた、ぱちゅりーはそれを無視して一家を見るとわざとらしく大きく溜め息をついた。 「にんげんさんのまちはどうだった?ゆっくりできた?」 「みればわかるでしょぉおお!?れいむたちはくそじじいにひどいめにあわされたんだよ!!ゆっくりできるわけないよ!!」 その言葉を聞いてぱちゅりーはカッと眼を見開き、ぐいぐいとれいむに近付き不快感を剥き出しにした表情を見せ付ける。 眉間に皺を寄せ唇をくの字に折り曲げたぱちゅりーの顔を間近で見せ付けられたれいむは思わず身体を逸らしてしまう。 「だからぱちゅりーはけいこくしたのよ!にんげんさんのまちにいってもゆっくりできないって!! それなのにれいむたちはにんげんさんをどれいにするのはかんたんだなんていってゆっくりぷれいすをでていったわね そのけっかがこんなみじめなすがただなんて、ばかばかしいにもほどがあるわ!!」 「ばかっ!?おさっ!!ひどいよッ!!れいむたちはけがをしてるんだよ!!やさしくしなくちゃいけないんだよ!!」 「つけあがらないでね!なんでぱちゅりーがれいむたちのおしりをぬぐわないといけないの!?むっきゅんっ!! ばかなれいむはしらないだろうけれど、れいむたちみたいなおろかなおこないをにんげんさんのことばでじごうじとくっていうのよ!」 何故か冷たくあしらい自分たちを罵るぱちゅりーにれいむはその心中が理解できないでいた。 馬鹿だ馬鹿だと何度も言われ顔を赤くするも磨り減ったあんよではぱちゅりーに攻め寄る事も出来ない。 カリカリと青筋を立てたぱちゅりーはその辺に転がっていた枝を乱暴に咥えると突然と両目を失った子まりさの底部を引っ掛け転ばせた。 なされるがままにその球体状の小麦粉の塊はころんと地面にめり込み突っ伏した。 「ゆぎゅっ!!なにずるのぉおお!?まりしゃおこるよっ!!!」 立ち上がった子まりさは2つの空洞に入り込んだ土を落としながら双眸を細めぷくーっと膨れ勢いに任せて体当たりをしてみせる。 しかし視力を失った子まりさはぱちゅりーとは正反対の方向に突っ走り木の側面に顔面から見事に激突した。 「ゆべっぇ!!ゆ”、ゆ”ぅううっ!!ゆびぇええええぇえんっ!!!いじゃぃいいいっ!!!!」 「れいむのおちびちゃんになにするのっ!?れいむおこるよ!!!」 顔を腫れさせて泣き出す子まりさ、反射的にれいむが怒りを露にするがぱちゅりーは構わず叱責と罵倒を続ける。 「おめめをつぶされてしまったんじゃまともにかりもできないわ、どうしようもないやくたたずね」 「どおじでぞんなごどいうのぉおおお!?ふざけないでねっ!!おちびちゃんにゆっくりしないであやまってね!!!」 枝を咥えたままぱちゅりーはもう1匹の子れいむの元へ寄る、 子れいむは重傷を負っているにも関わらず薄気味悪く何が可笑しいのか愉快に笑い声を上げ続けている。 どうやら中枢餡を甚振られた様で思考回路に重大な欠陥が残ってしまい会話すらままならないらしい、 ぱちゅりーは枝の先で何度か突つくと、子れいむはヘラヘラと笑ったままプルッと軽い痙攣を起こしてうんうんとしーしーを盛大に放出した。 その生物の成れの果てとも言うべき無様な姿を見てぱちゅりーは、汚物でも見る様な眼差しを向け子れいむの額に唾を飛ばして嘲笑った。 「なんてけがらわしいのかしら……はきけがするわ……」 「ゆぴょ、ゆぺぇー、ゆぴゃー、ゆぴゃっぴゃっぴゃぁ~」 陰湿と言ってしまえる程のぱちゅりーの無慈悲な言葉がれいむの堪忍袋を破裂させる。 ぷるぷると小刻みに震えながら顔面を大きく膨らませて叫ぼうとした時、ずっと押し黙っていたまりさが声を荒げて遮った。 「おさっ!まりさたちがちゅうこくをきかなかったのはたしかにわるかったのぜ……まりさはおこられてもしかたないのぜ…… でもおちびちゃんたちはまりさについてきただけでつみはないのぜ!だからあやまってほしいのぜ!!」 「…………」 「あやまるのぜ!!おちびちゃんにあやまるのぜ!!」 キリッと吊り上がったまりさの眼がぱちゅりーを見据える。 まりさは険しい剣幕で捻じ伏せようと必死に眉を折るが相対するぱちゅりーも群れを任された長というだけあって微動だにしない。 僅かに走った緊張を打ち砕いたのは全く感情が読み取れない冷淡な口調で呟いたぱちゅりーの言葉だった。 「もうすぐしゅうかいがはじまるわ、まりさたちもきなさい」 まりさの要求を無視してぱちゅりーは振り向き様にそう言い残すと元来た道を引き返して行った。 子ゆっくりたちへの侮蔑が撤回させる事がなく、背を向けたぱちゅりーにまりさは必死に名を呼んで振り向かせようとするも効果はなく、 どんどんと遠ざかってぱちゅりーの姿はあっと言う間に見えなくなってしまった。 「ゆうぅっ……ひどいのぜ……おちびちゃんはわるくないのぜ……おちびちゃんをぶじょくするなんてゆるせないのぜっ!!」 「ゆーっ!!ぱちゅりーがあんなことをいうなんてれいむはしんじられないよ!まりさ、ゆっくりしないでぱちゅりーをおいかけるよ!」 「ゆぅ……そうするしかないのぜ……!!ばあいによってはせいっさいっもじさないのぜ!!!」 蹲っていた親れいむと親まりさははそれぞれ子供達を咥えて再び歩き出そうとするが、 そこで猛烈な激痛が下部から電流を走らせるが如く伝わってきて思わずまりさが叫び声をあげた。 「ゆぎぃいいいっ!!まりざのあ、あんよざんがぁっいじゃいぃいいっ!!」 「ま、まりさどうしたの!?いたいいたいしてるの!?れいむがぺーろぺーろしてあげるよ!!」 パートナーの悲鳴に咥えていた我が子を落としてれいむが近寄り、痛みを感じると訴えるまりさのあんよをそのピコピコで僅かに持ち上げて覗き込んだ。 そこには焦げて黒ずんだ小麦粉の肌に所々線が走り罅割れているのがはっきりと分かった。 傷の具合を見てれいむは絶句した、医療の知識がないれいむから見てもまりさのあんよは致命的な損傷を受けているのが一目で判断できたからで、 中途半端に焼かれたあんよでコンクリートの路面を必死に走って逃げてきた事がこの結果を生み出し、 単に舌を舐め合わせるだけでは修復するのは不可能だと知ってしまった事がれいむから言葉を失わせる。 困惑したまま動かないれいむに言い知れぬ不安を察知したのか、激しい痛みから涙腺が刺激されゆんゆんと涙を流しながらもまりさがれいむに問い掛ける。 「れ、れいぶっ……ま、まりざの、まりざのあんよざん、どうなっでるのぜっ!?ね、ねぇ、れいぶっ!?」 「ゆ……ゆぅ……」 「いだいのにがんがくがないのぜっ!?ま、まりざもううごけないのぜっ!?れ、れいぶぅううっ?いやなのぜっ!!ぞんなのいやなのぜっ!! まりざのしゅんっそくっなあんよざんっ、おでがいだよぉおおっ!!うごぐのぜっ!!ゆっぐりじないでねっ!! ゆぅうううっ!!!ゆぅうううううっう!!!どおじでぇえっ……どおじでぇえええっ……!?」 「だ、だいじょうぶだよ!!おちついてね!!あとでれいむがたくっさんっぺーろぺーろすればきっとなおるよ! いまはまりさをうしろからおしていくから、ゆっくりがまんしてね!」 とにかくここに居てもどうにもならないと、れいむは転がった子供達を回収し泣き喚くまりさの口に押し当て咥えさせると、まりさの背中に回って慎重に押し始めた。 強く押し過ぎると転がってしまう為、湿地を利用して滑らす様に押していくが、 スライドさせる事でまりさのあんよに再び痛みが走り子供達を咥えたまま、まりさは表情を歪ませ続けた。 そしてどうにかして樹海のゆっくりプレイスに到着する頃には、広場に群れのゆっくりたちが集まって長であるぱちゅりーの話に耳を傾けている最中だった。 「むきゅー、やっときたわね」 相談会も終盤に差し当った辺りでようやく姿を見せたれいむ一家にぱちゅりーが気付くと、話の腰を折って集った群れのゆっくりたちに一家を注目させた。 「みんな、あっちのほうをみてね。さっきにんげんさんのまちからかえってきたれいむたちよ」 一部の者は既に気付いて視線をれいむ一家に向けていたが、ぱちゅりーが大々的に視線を移すように促すと群れの一同は一斉にれいむたちに向きを直した。 その痛々しい姿に眉を顰める者や、みすぼらしい貧相な姿を嘲笑する者や、同情の眼差しを向ける者など様々だ。 そんな中、注目を浴びた当事者であるれいむの餡子脳が突然と強かな発想を閃かせた。 それはこの場が『自分達がいかに可哀想で周りが協力して助けてあげないといけない存在なのか』群れのゆっくりたちに訴えるチャンスである事に気付いたのだ。 大きく息を吸って声を張り上げ目尻に涙を浮かばせ有りっ丈の悲劇を演じて同情を買おうとした時、それよりも早くぱちゅりーの声が辺りを一喝する。 「このばかどもをわらってやりなさい、ぱちゅりーのちゅうこくをむししたあげく、にんげんさんにぼっこぼこにされてかえってきたのよ!」 「ゆっ!?」 れいむはある筈のない耳を疑った、ぱちゅりーはあろう事か群れの全員が集まったこの場でれいむたちを咎め始めたのだ。 あまりにも理不尽なこの対応に、れいむはわなわなと震えて歯茎を晒し怒りを露にするも、 切り株の上に陣取って高みからほくそ笑んだぱちゅりーはそれを無視して尚も罵倒を続けた。 「あのまりさはまるであかんぼうのようになきわめいてにんげんさんにあたまをさげたなさけないゆっくりよ そのよこのおちびちゃんはきょうふのあまりうんうんやしーしーをもらしすぎてあたまがくるってしまったわ!」 それが事実だったとは言え誇張され笑い話の種にされた事に、 居ても立っても居られなくなったれいむは吸い込んだ空気を頬に溜め全開に膨らませてぷくーっをしてみせたが、 周りのゆっくりがヒソヒソと含みのある笑みを浮かべ自分達に厭らしい視線を向けている事に気付いて直ぐに萎縮してしまう。 よく見れば、痛みに眼を逸らしていたゆっくりや、同情の眼差しを送っていたゆっくりが一変して態度を変え、 馬鹿にした様にニタニタと微笑んでれいむ一家の奇怪な姿を喜々として見つめている。 「ゆぷぷっ、にんげんなんかにあたまをさげるなんてひんっじゃくっなゆっくりなのぜ!」 「おさのはなしをきいていればこんなことにはならなかったのに、れいむはいなかものねぇ」 「あのおちびちゃんはあたまがゆっくりできなくなっちゃったんだね、わかるよー」 先導したぱちゅりーが自ら率先してれいむ一家を無能と毒づいた事で、 見劣った他者を蔑視しいじめの対象とするゆっくりたちにはれいむ一家が恰好の的に成り得てしまった。 周囲から注がれる冷ややかな視線の中、れいむは歯軋りを立てながら険しい表情を浮かべてぱちゅりーを睨み付ける。 群れの長であり、他ゆんとの均等を図りバランスを調整する役割があるぱちゅりーがこの様な暴挙に出たのにはある訳があった。 ここ数年で人間との接点を持つようになったゆっくりたちは人間を服従させるという無謀な野心を抱き群れを離れる事が多くなった。 そうしたゆっくりの数をこの群れに残っているゆっくりよりもぱちゅりーは多く見てきたが、その彼らの大半は帰ってこなかった。 だが稀にこのれいむ一家の様に生きているのが不思議なくらいの重傷を負って辛うじて帰ってくる者がいた。 ぱちゅりーがこのゆっくりプレイスの長に就任してから間もなくの時、どうにか戻ってきた痛々しい姿の彼らを手厚く保護し、 手の空いた者で彼らを看病し食と住の保証をしたが、その結果周りのゆっくりたちの負担が増し群れ全体に多大な影響を及ぼす破目になった。 それが冬が間近に迫った秋の出来事だったため、群れで管理している保存用食料の貯蔵量が減少してしまい、 越冬前に分配するはずの物が行き渡らず、春を迎えられたゆっくりが例年の6割近くに落ち込んでしまったのだ。 皮肉にも保証を約束されたゆっくりたちは無事に春を向かえ、自分たちが特別な存在であると勘違いしゲス化してしまった。 過去2度もそのような経緯があり、今回の一件も丁度秋に差し掛かった越冬の準備期間に入り始めた時期という事もあり 一部の愚か者の所為で群れが崩壊する可能性がある事を知っているぱちゅりーは、 教訓を生かし心を鬼にし、他のゆっくりが彼らを見て学習してくれることを信じれいむ一家を突き放したのだ。 「きょうのしゅうかいはいじょうよ!かいっさんっしてね!」 群れのゆっくりたちの様子を見て思惑通りに事が進んだのを確認したぱちゅりーは、 切り株から降り帰路に就こうとした所をれいむが立ち塞がりそれを阻まれた。 「どおじであんなこというの!?れいむたちはかわいそうなんだよ!!みんなでまもらなくちゃいけないんだよ!!」 既に保護を受ける立場だと主張するその甘ったれた思考に、やはりれいむたちは頭が足りていないゆっくりだと認識を改め、 ぱちゅりーはくぐもった笑いを漏らしながられいむの頬に突き刺さった割り箸を咥えて掴んだ。 「むっきゅん、いやならゆっくりぷれいすからでていくことね」 「ゆびぃぃいっ!!!いじゃぁぃいいっ!!!や、やべでよぉおおおっ!!!れいぶにざざっだわりばしさんをざわらないでよぉおおお!!」 ぐいぐいと上下に振り、僅かにれいむの餡子が漏れそうになったところでぱちゅりーは割り箸を離してやると、激痛から涙をポロポロと流してれいむが震えた。 ふんっと息巻いてれいむを一蹴すると、ぱちゅりーはそそくさと自分の巣に戻っていった。 この場に残されたのは晒し者にされ蔑まれた傷だらけのれいむ一家だけだった。 ――――――――――――――――― 翌日かられいむ一家の負け犬としての新しい生活が始まった。 これまで食料の確保を担当していたまりさはあんよの機能を失ってしまった為に外に出る事が叶わず、 結果として移動に難がないという理由だけでれいむが狩りを担当する事になった。 しかしれいむ種と言えば他のゆっくりと比べ劣った体躯と知慮の浅はかさから育児など比較的安易な家庭内の役割を担う場合が大半であり、 このれいむも同様にそれらの事柄を得意とし、今までの営みを過ごして来た言わば専業主婦であったため、 培われた知識と技術が産み出す経験の一切を持たない彼女が狩りを本職とし転向するのは容易な事ではなかった。 そんなれいむに更なる試練を伸しかけたのは、自身の頬から忌々しくも突き出た割り箸だった。 草木の生い茂った所へ赴けば無造作に伸びた茎が執拗に頬の割り箸の側面を突き、 れいむは餡子、神経とも言える部分を無作為に引っ掻けてしまい、思うように進行出来ず、 それ故に活動範囲は狭まり、れいむは比較的開けた場所を選択して狩りを行わなければならなかった。 「ゆふーっ、これだけあればおちびちゃんはおおよろこびなのぜ!」 木の実や虫の死骸を探して視線を落としていたれいむはどこからか聞こえてきたゆっくりの声に反応してそちらを見ると、 裏返した黒いお帽子に野花や茸を大量に抱き込んだまりさがそこに見えた。 パンパンに膨らんだお帽子の鍔を咥え引き摺ったまりさは子供の顔を想像しているらしく、綻んだ笑顔を作ってゆっくりプレイスに戻っていく。 れいむは自分の、まりさから貸してもらったお帽子に視線をずらした。 上半分を服従させようと挑んだ人間に破られてしまったため、植物の蔓を駆使して穴を塞いだ急造品のそれは随分と貧相な佇まいをしている。 無論中身は僅かに拾えた小さな木の実が数粒入っているだけで、これでは今日の夕食どころかおちびちゃん一ゆん分の食事にも満たない有様だ。 ゆぅ、と溜め息をついて不景気な面をしたままれいむは狩りを続けていると唐突に不愉快なせせら笑いが響いてきた。 「ゆぷぷっ、みるのぜ、わりばしれいむなのぜ!」 「ほんとうだわ、いなかもののれいむよ。だれのきょかをとってここでかりをしているのかしらね?」 見れば2匹のゆっくりがれいむの前に立っていた。 にんまりと厭らしく肉を歪めて嘲笑った姿はあからさまにれいむを見下している。 このゆっくりたちとれいむは面識があった、おうちが近所だった為かつては一緒に座談会を開き他愛もない会話で笑いあった仲なのだが、 今ではその視線に込められたものがかつてのものと異なり、侮蔑や睥睨の一色を残すのみでれいむはただ辟易とするしかなかった。 ゆっくりとは認識が山の天候の様にコロコロと移り変わるもので、昨日まで友人だったものにある種の弱みを見つけ侮辱の対象へとすり替えるのは日常茶飯事である。 性質が悪い事は、それらに面白みや優越と言った自身の感情を満たす要素が加わればそれを覆すのが酷く難しくなる点だ。 「れいむぅ~、ここはまりささまのかりばなのぜぇ!」 「し、しらないよ!もりさんはみんなのものなんだよ!まりさだけのものじゃないよ!!」 「まぁ、なんてずうずうしいのかしら!まりさ、このせけんしらずのれいむにるーるをおしえてあげるといいわ!」 「いいかんがえなのぜぇ、まりささまがじきじきにおしえてやるのぜ!」 言い掛かりで因縁を付けていたまりさは頷くと、素早く跳ねて転がるようにれいむの顔面に頭をぶつけた。 成されるがままに大きく横転したれいむは顔面から地面に突っ伏して土煙を巻き上げた。 「ゆびぃいいっ!!!な、なにずるのっ!?たいあだりざんはゆっぐりできないよ!!!」 「みるのぜ、すこししかとれてないのぜ!」 「ほんとうね!れいむはのろまなぐずねぇ!」 起き上がったれいむが見たものは、れいむが狩りに使っていたまりさのお帽子の底に舌を伸ばして木の実を口に移そうとしているありすの姿だった。 「やめでよぉおお!!ぞれはれいむのたいっせつっなごはんざんなんだよぉおおお!!」 「これはばっきんっなのぜ!!まりささまにきょかをとらなかったばつなのぜ!!」 「むーしゃむーしゃ、それなりー!まったく、こんなひんそうなきのみなんておやつさんにもならないわ!」 にやりと微笑んだありすが、空になった菓子の袋を乱暴に捨てるようにお帽子を放り投げた。 れいむは泣きながらそれを回収し、まりさたちを睨み付けようと振り返るが興味を失くした2匹は既にゆっくりプレイスへの帰路を目指して背を向けていた。 「ゆぅうううっ……!ごはんざんがっ……!おちびじゃんのっ、まりざのっ……れいぶのごはんざんっ……!!」 結局仕返しや復讐をしようにも力の差からそれは叶わず、泣き寝入りするしかないと分かってしまったれいむは 仕方なく空のお帽子を被って収穫も無しにおうちに引き返した。 おちびちゃんやまりさが悲しい顔をするだろうと、憂鬱な気持ちを内に秘めながら帰宅すると そこでれいむはとんでもないものを目の当たりにしてしまった。 「ゆっひぇんっ!!きょうからこのまりさはまりちゃさまのどりぇいなのじぇ!!どりぇいはまりちゃさまのいうことをきくのじぇ!!」 「おめめがないまりしゃはれいみゅのさんどばっくしゃんになっちぇね!ゆっきゅりたいあたりしゅるよ!!」 「こいつうんうんしゃんたべちぇるぅううっ!ゆぷぷーっ!きっちゃないよー!!」 れいむのおうちがある木の根の前に広がった光景、それは――。 あんよが焼け焦げ身動きが取れないまりさのお下げを大勢の子ゆっくりたちが咥えて引き摺り、 転ばせたまりさの背中に子まりさが乗り上げボスンボスンと音を立てて憎たらしく跳ね上がっている様と、 その横では視力を失った子まりさを数匹の子ゆっくりが囲み、順番に体当たりをして遊んでおり、 更には中枢餡を傷付けられ足りないゆっくりになってしまった子れいむにうんうんを食べさせ笑っている者までいた。 愛する家族が酷い目に合わされていると知って、れいむは意識するよりも早く声を張り上げた。 「こらぁあ”あ”あ”あ”ああっ!!!!れいぶのまりざをっ!!おちびぢゃんをいじめるなぁあ”あ”あ”あ”あ!!!!!」 「「「「ゆっ!!」」」」 れいむの存在に気付いた子ゆっくりたちは顔を上げると一目散に逃げ出した。 「わりばしれいむがかえっちぇきたのじぇ!みんな、ゆっきゅりしないじぇにげるのじぇ!!」 「「「ゆっきゅりりかいしちゃよ!!」」」 ケラケラと笑い声を上げて三方に別れ逃げ出す子ゆっくりたち、れいむが1匹でも捕まえてやろうと躍起になるが、 始めての狩りと先ほど受けた身体の傷が思った以上に疲労を蓄積させていたようで、上手く動けず結局全員取り逃がしてしまった。 地団駄を踏んで悔しさを噛み締めていると、れいむはすすり泣くまりさの声を耳にして慌てて家族の元に近寄った。 「ま、まりさっ?だいじょうぶ!?なにかやられたの!?もうくそがきどもはいないよ!あんっしんっしてね!!」 「ゆ”ぅう”う”う”うっ!!!ゆ”ぅう”う”う”う”ううっ!!!!ぐやじいっ……!!ぐ、ぐやじいのぜっ……!!!」 一切の抵抗が出来ず子供達の玩具にされた事実はまりさの自尊心はずたずたに引き裂く結果になった。 ぽろぽろと涙を流しては、あまりの悔しさに嗚咽を漏らし、失った自身の存在価値にぶつけようのない怒りを乗せて唇を尖らせる。 れいむには掛けるべき言葉が見つからなかった、業腹な仕打ちを受けて夫や男役としての価値に傷がついたのをどう慰めればいいのか分からなかったからだ。 俯いていたれいむは隣で横たわった子まりさの呻き声を聞いてハッとなった、 急いで振り向くとそこには全身を赤く腫らせた子まりさが荒い息をして蹲っていた。 「ゆぅ……っ!い、いだいのじぇ……ま、まりしゃがどおぢで、ご、ごんなめに、あわなぐちゃいげないのじぇ……ゆぅっ……ううっ……」 「おちびちゃんっ、おかーさんがぺーろぺーろしてあげるからね!おちびちゃんのいたいいたいさんはゆっくりしないでとんでいってね!!」 大勢で囲んで痛めつける、俗に言う『袋』にされた子まりさの痣は思わず眼を逸らしたくなるほど壮絶だった。 視力が無く防衛の手段も逃げの一手にも出られず翻弄され玩ばれた事実に、 れいむは悲嘆に暮れながらも涙を落とさないように堪えながら懸命に舌をなぞらせた。 一通り応急処置を終えたところで、れいむはくちゃくちゃと妙な音が聴こえてくるのに気付いてそちらに視線を送った。 そこには、自身で捻り出したうんうんを実に満足そうに平らげている子れいむの姿があった。 近くに転がっている枝から察するに先ほどの子供達が子れいむに刺激を与えて、排出したうんうんを強引に食べさせた様で、 正常な思考が出来ない子れいむは、ゆぴゃぁと嬉しそうに頬を動かしてニッコリと微笑んでいる。 あまりにも哀れな愛娘の姿を見てれいむは溢れんばかりの涙が頬を濡らし、呟く。 「おちびじゃんっ……!やべでねっ……ぞんなっ、ぞんな、なざげないごどじないでねっ!おかーざんっ、か、かなじくなるよ……!」 「むーぴゃむーぴゃ、ひゃひゃゆぴゃ~!ゆっぺぇ~!!」 れいむの静止の声に反応することなく、子れいむは排泄物をただひたすらと腹に収めるのみ、 どうしてれいむたちがこんな仕打ちを受けないといけないのかと、世間の風当たりの強さに家族ともども涙する他なかった。 ――――――――――――――――― 秋も半ばの冬の気配が徐々に垣間見え始めた頃、樹海のゆっくりプレイスに1匹のゆっくりまりさが流れ着いた。 まりさは住んでいたゆっくりプレイスが一斉駆除によって滅ぼされ命からがら逃げてきたゆっくりで、 身辺の整理がつくまで暫く群れの一員として仲間に加えて欲しいと願い出た。 群れの長であるぱちゅりーはれいむ一家への厳格な対応という前例がある様に、 比較的古い体質の思考に囚われている堅物のゆっくりである為、突然の新参者に厳しく当たっていたのだが、 まりさは狩りが上手く、群れの誰よりも働き、子供たちに慕われる、心優しくたくましいゆっくりで、ぱちゅりーは直ぐに彼を信頼に足るゆっくりだと認識を改めた。 そんな輪の中心に居る流れ者まりさに嫉妬心を剥き出しにして見ていたのはあんよを焼かれたまりさだった、 番であるれいむの懸命なぺーろぺーろのお陰で、子ゆっくりがそろーりそろーりをする程度の速度で 歩く様になれるまで傷を癒したまりさは、狩りが下手なれいむの負担を軽減できればいいとおうちの近くでご飯になりそうな物を探していたその時、 群れの皆に慕われるあのまりさを遠巻きに目撃してしまった。 狩り上手だと称えられた、かつての自分がそこに居た場所だけあって余計に心苦しい思いを隠し切れなかった。 そんなまりさの心情など露知らず、想像以上にリーダーシップを発揮する流れ者まりさの資質に気付いたぱちゅりーは、 次期長候補として流れ者まりさに群れを引っ張ってもらおうと画策していた。 ぱちゅりーは老齢で今回の越冬が長いゆん生の最後になると自覚していたため、一刻も早く長を決めなければならなかった。 ようやくその器を持つゆっくりと出会えた事はぱちゅりーを慌てさせた、とにかくこの土地に居座って貰う為に おうちを用意してこの群れ一番の美ゆっくりであるありすを流れ者まりさの嫁にさせようと考えていた。 しかし越冬の時期が刻一刻と迫っている今そのおうちを作っている余裕はない、そこでぱちゅりーはある妙案を思い浮かべた。 「れいむーっ!!でてらっしゃい!!おはなしがあるわ!!」 明け方のまだ日が昇る前の暗がりの中、突然と響いたぱちゅりーの声に重い目蓋をピコピコで擦りながられいむはおうちから顔を覗かせた。 見れば長であるぱちゅりーとその側近のみょん、更には最近群れに加わったばかりの流れ者まりさが顔を揃えて立っていた。 「ゆぅ……こんなゆっくりできないじかんになんのようなの?……」 「むっきゅん、おはなしがあるわ!まりさもよんできてちょうだい」 「ゆー?……」 あの一件以来れいむはぱちゅりーを憎らしくも思うものの高圧的な態度には逆らえず、関わり合いにならないよう微妙な距離を保っていた、 無論そんなぱちゅりーに反抗すればもっと五月蝿くなるのが分かっていたため、 仕方なく言われるがままにおうちの中に引き返し、寝息を立てているまりさをそっと起こし2匹で外に出た。 眠そうにしていたまりさは流れ者まりさが居る事に気付いて表情を曇らせる。 「きたわねっ、むっほんっ!けつろんからいうわ、れいむたちはむれのぎむであるきょうどうしょくりょうこにごはんさんをのうひんしていないわね? だからおうちをとりあげるわ!ゆっくりしないででていってちょうだい」 実に端的に、そっけなくぱちゅりーはそう言い放った。 れいむとまりさがその言葉の意味を理解するのに3分もの時間を有した、硬直していた2匹がお互いに顔を合わせて小首を傾げた後、 ようやく事の重大さに勘付いて大きく顔を歪めてぱちゅりーに食って掛かった。 「どおじでぞんなごどいうのぉおおおっ!!??おうぢをどりあげるなんでゆっぐりでぎないごどいわないでねっ!!!」 「そうなのぜっ!!いくらなんでもひどすぎるのぜ!!おさっ!!どういうことなのぜ!!」 「むっきゅん、りゆうはいったわ!むれでおこなうべきぎむをはたせないゆっくりはでていってもらうことになったのよ!!」 この横暴が過ぎるぱちゅりーの態度に、はいそうですかと納得する訳にはいかないまりさは詰め寄って事情を問い質そうとするが、 側近のみょんに取り押さえられてぱちゅりーには近付く事はおろか、反論するための発言さえ封じ込められてしまった。 随分と独裁的なやり口であるのだが、ぱちゅりーが言う通りれいむ一家は群れで管理運営している共同食料庫に一切の保存食を提供していないのは事実だった。 狩りの担い手がれいむに変わったことがその一因で、今日一日を凌ぐのがやっとの 余剰分を納める余裕などない現状を事情としてもぱちゅりーの前では言い訳にすらならない。 しかし負い目がある点を踏まえたとしておうちの取り上げに繋がるのは聊か極論が過ぎるのだが、厄介払いを含めて、 あわよくば流れ者まりさのおうちにしようという算段のぱちゅりーには是が非でもれいむたちを追い出してしまいたかった。 僅かな抵抗を見せる2匹を無視してぱちゅりーは早速おうちを接収しようと入り口に向かうが、 突然と張り上がった声に背中を叩かれぱちゅりーは思わず歩みを止めた。 振り向いたぱちゅりーが視線を送れば、やや困惑した表情を浮かべて流れ者まりさが直立していた。 「ぱちゅりー……いくらなんでもかわいそうなんだぜ……みたところひどいけがをしたゆっくりだよ、 みんなでちからをあわせなくちゃよわいゆっくりもいきのびられないんだぜ!」 あまりに乱暴なやり口に対する反骨心とれいむ一家に対する同情を織り交ぜた当惑の顔をしてみせた流れ者まりさは、そう言ってぱちゅりーを窘めた。 水を挿したその発言にぱちゅりーは自分でも流石に度が過ぎたのではないかと、冷えつつある感情に押されバツが悪そうに眉間に皺を寄せる。 流れ者まりさからしてみれば本心の善意に間違いはないのだが、その善意を屈折した形で受け取ってしまったのは他ならぬまりさだった。 「いいのぜ……でていくのぜ!!」 「「「「ゆっ!?」」」」 その場に居合わせた、れいむを含む全員のゆっくりが思わず驚いて眼を見開く。 視線の先には酷く鋭い目付きをしたまりさが険しい剣幕で周囲を、流れ者まりさを睨み付けていた。 「れいむ、おちびちゃんをおこすのぜ……にもつをまとめてこんなにゆっくりできないぷれいすとはえいっえんっにおわかれするのぜ!」 「な、なにいってるのぉおお!?もうすぐえっとうがはじまるんだよぉおお!!おうぢさんがないとゆっくりできないよぉおお!!」 「うるさいのぜっ!!いいからまりさのいうとおりにするのぜっ!!」 れいむの静止を振り払ってまりさは重い足取りで一旦おうちに戻ると、寝ぼけ眼の子ゆっくりを起こして再び皆の前に姿を現した。 番の行動に理解を示せないれいむはわんわんと泣きながらまりさを止めようとするが、まりさの決意は岩よりも固くそれは叶わない。 「せわになったのぜ……!」 それだけ言い残して出立しようと子ゆっくりを咥え掛けたまりさに流れ者まりさが慌てて割り込んだ。 「ま、まつんだぜ!おちつくんだぜ!そんなきずだらけのからだじゃむりなんだぜ!!」 「これいじょうまりさにかかわるんじゃないのぜ!!れいむっ!!いくのぜ!!」 聞く耳を持たないまりさは、サッと子供達を咥えるとそそくさと樹海のゆっくりプレイスを出るべく歩き始めた。 おろおろと泣き続けてまりさの遠ざかる背中を見ていたれいむも一度だけぱちゅりーたちを一瞥し後ろ髪を引かれる思いのまま、まりさの後を追った。 「まっでよぉおお!!れいむをおいでかないでねっ!!!」 残されたぱちゅりーたちは唖然としたまま一家を見送るしかなかった。 まりさは押し黙ったまま前だけを見つめて進んでいた。 だがまりさのあんよは子ゆっくりが這いずる程度の速度でしか移動できない為、 直ぐにれいむが前に立ち塞がっては戻るように説得するが、それされも押し退けてまりさは歩みを進めた。 暫くしてゆっくりプレイスが見えなくなる程の距離を歩いて突然とまりさが立ち止り咥えた子供達をそっと降ろした。 無言で追従していたれいむが恐る恐るまりさの顔を覗くと、砂糖水の涙が頬を伝っているのが分かった。 「ま、まりさ……ないてるの?」 「まりざはっ……!まりざは……むれでいちばんのかりめいじんだっだのぜ……!だれからもそんけいざれでだのぜっ……! それがっ……それが、あんなしんざんもののまりざにどうじょうざれるなんで……!ぜったいにいやなのぜっ!!!」 まりさの中で僅かに残ったプライドが流れ者まりさの憐れみの元で生きる事を許し得なかった。 その心情を表した言葉を聞いて、れいむはようやく納得した。 自尊心を犠牲にしてでも後ろ指を指されても芋虫の様に這い蹲ってでも、 生きる為には群れに頼るしかない事実を狩りを行うようになってからしみじみと感じ取っていたれいむではあったが、 一方でまりさが日を追うごとに自信をなくし活力を失ってい姿にも気付いていた。 こうしてまりさが行動を起こしたのはある意味で切っ掛けになったのかもしれないと、 先々の不安は拭いきれないものの、れいむは心を決め大きく頷いた。 「ゆぅ、そうだね。まりさがそこまでいうなられいむはもうなにもいわないよ!あたらしいゆっくりぷれいすをいっしょにさがそうね!」 「ゆぅううっ……!れいむぅううっ……あ、ありがとうなのぜ……!まりざはれいむをおよめざんにできでじあわぜなのぜっ……!」 泣いていたまりさの目尻をれいむはぺろりと舌でなぞって掬うと、2匹は顔を合わせて笑い合った。 近くで様子を伺っていた両目の無い子まりさも、両親たちが放っていた緊張が解れたのを知って同じ様にニッコリと微笑んで頬を緩ませた。 「ゆーん、おちょーしゃんたちなかなおりしちゃのじぇ?ずっとぴーりぴーりしちぇちぇまりしゃゆっきゅりできなかったのじぇ!!」 「ゆふふっ、おちびちゃんごめんね!これからいっしょにいっぱいゆっくりできるゆっくりぷれいすをめざしてたびだつよ!」 「そうなのぜっ!まりさたちにはきぼうのみらいさんがまってるのぜ!!」 そうしてまだ見ぬ桃源郷を目指しれいむたちが向かおうとする道の先から、 僅かに昇り始めた太陽の光が、まるで一家を祝福するかのように射し込んでいた――。 ※後編に続きます
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/655.html
副工場長れいむの末路4(終) 「ゆ゛・・・・」 れいむは薄暗いアパートの一室で目を覚ました。 ひんやりとした堅い床の感触が伝わってくる。れいむは上体を反らして辺りを見回した。 男の姿は見当たらない。また何処かへ出かけたのだろうか? 先日の一件の後、気がついた時には真ん中から裂けたれいむの体は何故か元に戻っていた。 しかし、一命は取り留めたものの、もはやれいむの体は以前のように自由に動く事はできなくなっていた。 動けば体中に激痛が走り、うんうんやしーしーは自分の意思とは関係なく勝手に体内から排出された。 「ゆ゛っ・・・・!ゆ゛っ・・・・!」 芋虫が這うように床を進む、以前のように自由に飛び跳ねる事はもうできない。 そしてゴミのように打ち捨てられているしょぼくれたまりさの残骸に寄り添ってそれを喰らう。 「む゛ーじゃ・・・む゛ーじゃ・・・」 もう同属のゆっくりを食する事への嫌悪感は無くなっていた。 歯が殆ど抜け落ちた為に、ロクに噛み砕くこともできない。口に入れて無理やり流し込む。 口を動かすたびに体中がビキビキと悲鳴をあげる。この薄暗い部屋でどれくらいの時間を過ごしただろうか?もはやわからない。 そんな状況でもれいむは死んでしまいたいとは微塵も思わなかった。ゆっくりさせろ。ゆっくりさせろ。 目をギラつかせながら、一心不乱に真っ二つに裂けたまりさの残骸に噛り付く。 腐りかけたまりさを腹に収める事で一時の「ゆっくり」を得ようと必死にまりさの餡子を口に入れる。 ただひたすらに「ゆっくり」を渇望した。 「じあ゛わ゛ぜ・・・じあ゛わ゛ぜ・・・じあ゛わ゛ぜぇぇ」 不幸のどん底のような顔で幸せと呟くれいむ。 どうしてこうなった?どうしてこうなった?れいむの餡子脳内に様々な思いがよぎる。 工場長がれいむを副工場長なんかにしたからだ。 更にれいむを助ける事ができずにアホ面を浮かべて部屋からでていった。 死ね!帰ったられいむが真っ先にあの馬鹿を殺してやる! ゆっくり死ね!ゆっくり死ね!そう呟きながらひたすら腐りかけたまりさを腹に流し込む。 その時、部屋の照明が光を放つ。久しぶりの光に目を細めるれいむ。 ドアが開き、ゆっくりできないあの男が部屋に入ってきた。 相変わらずの無表情、こいつの顔を見ただけで息が切れる。絶望的にゆっくりできなくなる。 れいむは「ゆひゅーゆひゅー」と苦しそうに呼吸をしながら何とか声を絞り出した。 「ゆ゛っ・・・・に゛ん゛げん゛・・・!」 眉間にしわを寄せてただただ男を睨む。 男はつまらさそうな顔でれいむを見ている。 「クソ袋、お別れだ」 「ゆ゛っ!!!」 久しぶりに口を開く男。 お別れとはどういう事だ?まさか・・・まさか殺すのか?かわいいれいむを殺すのか?? れいむは激痛が走る事も構わずに部屋の隅まで素早く後ずさった。 「じね゛!!じね゛!!ぐるな゛!!じっ・・・・ゆ゛ッ!ゆげっ!げげげっ!」 まりさの残骸がこみ上げて口から排出された。 それにも構わず部屋の隅にギュッ!と体を押し付けて、涙を浮かべてガタガタと震える。 男に対して何をしても無駄だという事は完全に理解した。れいむはせめて可能な限り男から距離を取ろうと壁に密着する。 断続的にこみ上げてくる吐き気、知らないうちに垂れ流したうんうん。体に走る激痛。 全ての現象がれいむに敵対し、牙を剥いている。そんな錯覚に陥る。 (ゆっくりしてないれいむだけど、まりさがゆっくりさせてやるのぜ) 「ゆ゛ぐっ・・・!ま゛っ!ま゛でぃずぁぁぁぁ・・・・までぃざぁぁぁぁ・・・・」 れいむがマヌケ面のまりさの名前を一心不乱に叫びだした。 冷蔵庫の中で一晩だけ一緒に過ごしたマヌケ面のまりさが日に日にれいむの中で大きな存在になっていた。 このゆっくりできない部屋で唯一ゆっくりできた思い出にすがるれいむ。 もはやマヌケ面のまりさが死んだ事すら覚えていないのかも知れない。 「どうぞ、こちらです」 男に誘導されて部屋に入ってきたのは簡素な作業服に身を包んだ人間が2人。 その2人がれいむを見るなり驚いたような表情を浮かべた。 「これはひどい、れいむ種ですか?このゆっくりは」 「そうです。酷い虐待を受けたようで、繁華街に捨てられていた所をかわいそうに思って拾ったんですが 言う事は聞かないし、日がな暴れるので手を焼いてしまって」 部屋が明るくなって気がついたが作業台の上に整然と並んでいた小物の数々が床に散らばっている。 男がやったのだろうか?意図はわからないが、ゆっくりできない予感しかしない。 男は手のひらでしょぼくれたまりさの残骸を指差して話を続ける。 「挙句、一緒に拾ったまりさまで食い殺してしまったんです」 「これはひどい・・・」 「ゆ゛っ!」 「自分の知識不足でこんなことになってしまって・・・すみませんが、処分の方をよろしくお願いします」 「野良ゆっくりの飼育は難しいですからね。前の飼い主が贅沢を覚えさせてしまうと手に負えないんですよ」 男が縊り殺したしょぼくれたまりさが、いつのまにかれいむが殺した事になっている。 れいむはすぐにでも反論しようと思ったが、それよりもあの変な服を着ている2人組・・・ 何処かで見た事がある。 れいむの餡子脳がウズウズと刺激される。 虐待によって更に朧気になってしまった記憶、それでも脳裏に焼きついて居るという事は・・・ あれは3日よりもっと前のゆっくりとした昔の事。 工場長に抱きかかられて繁華街を歩いて居た時の事だ。 片目を露出させながらフラフラと呪詛のように「ゆっくりできない」と呟きながら 歩いていたありすが突然棒で小突かれてあいつらに連れ去られていった。 工場長はあいつらを「ほけんじょ」の人間だと言った。 「馬鹿な人間に飼われたゆっくりはああなるんだぞ、れいむ」 「ゆっ!ゆっくりりかいしたよ!おぉ、ぶざまぶざま!」 そうか!馬鹿な28番にさらわれて飼われた為に保健所の奴等が来たのだ! 片目をぶら下げながらボーッと死んだ魚の様な目でれいむを見ていたありす。 れいむもああなるのか?あのクソのようなありすの様にれいむは連れ去られて死ぬのか? 「がえ゛れ゛ぇぇぇぇ!ぼげんじょはい゛ま゛ずぐじね゛ぇぇぇぇ!!!」 れいむは軋む体に鞭をうって、ありったけの力を振り絞って叫んだ。 作業員達が困ったような顔で乾いた笑い声をあげる。 れいむと作業員達の間に割ってはいる男。しゃがみこんでれいむの頭を優しく撫でる。 男が唐突に接近してきた為に、れいむの顔が見る見る青ざめた。 「ゆ゛ぎぃっ!ざわ゛ら゛な゛でぐだざい゛っ!」 「ごめんな、れいむ、最後にこれをやるよ」 男がれいむの口を無理やりこじ開け、口に何かを放り込んだ。 「ゆ゛っ?」 コロコロとした舌触り、その物体から僅かに染み出す甘い味。 無意識にそれを噛み潰す。 口の中に広がる甘酸っぱい味覚・・・この味・・・これは・・・ 赤ゆっくりの死体だった。 「ゆ゛ううううう!!!」 顔が焼けるように熱い。れいむの顔面の傷が疼く。 赤ゆっくりの味が記憶に無理やり蓋をして考えないようにしていたまりさの最後を思い出させる。 腹をパンパンに膨らませながら、 マリモのようになったれいむの左半分に必死の形相で体を擦り付けるまりさ。 頬はすりきれ餡子を垂れ流しながらそれでもすっきりを止めない。 止めたら死ぬのだ。止めれる筈が無い。 「すっ!すっ!すっ!すっ!すっ!ずっ!!ずぅ!!びゅ!!・・・・ヴゅ!!!」 突然まりさの体がピタリと止まり、 パン!という乾いた音が部屋に鳴り響いた瞬間、まりさの腹から餡子がビュルビュルと噴出した。 それと同時にまりさの口から大量の吐瀉物。 それは未消化の数百もの赤ゆっくり、その全てがまりさを睨み付けて絶命していた。 それを見たまりさは更に大量の餡子を吐き出した後、数秒で動かなくなって・・・死んだ。 「お別れは済ませましたか?そろそろ出発しますので」 「ゆ゛っ!!」 保健所の職員の声で我に帰るれいむ。 職員の1人が傍らに抱えていた箱が開かれる。 れいむにはまるで全てを飲み込む悪鬼が口を開けたように見えた。 「びっ!ひびぃ!や゛べでね゛っ!れ゛い゛む゛はどっでもえ゛ら゛い゛ん゛だよ゛っ!」 必死に部屋の隅から隅へ移動しようとしたれいむだが 職員の手は淀みなく動き、れいむの頭を押さえつけた。 そして悪鬼の口へれいむを放り込む。 「やだっ!ぼげんじょいやだぁぁぁぁ!」 すぐに箱から脱出しようと顔を出して尻を振って身を乗り出そうとしたが、 箱の中に充満した臭いに全身が硬直する。 それはゆっくりにしかわからないゆっくりの死臭だった。 「ゆ゛あ゛っ!ぐざい゛!ぐざい゛ぃぃぃぃ!」 箱の中で涙を流しながら叫ぶれいむ。 徐々にしまってゆく悪鬼の口。やるせない顔の職員。眠たそうな顔の職員。そして・・・ あいも変わらず無表情な男の顔、それらを映していた視界が細く狭くなっていく。 「ま゛り゛ざっ!!ま゛り゛ざっ!!ま゛り゛ざっ!!ま゛っっ!!」 飼育箱の蓋が閉められるとその声はピタリと聞こえなくなった。 数日後 繁華街の中央に聳え立つ警察署、そこから工場長は出てきた。 梅雨明け前だというのに夏と勘違いするほどの激しい日差しを憎々げに睨みつける。 男のアパートから帰ってから数日後、工場長は警察に呼び出されて出頭した。 あの男、28番が被害届けを出したのだ。 家に入り込み暴れただけなればここまで大事にはならなかったらしいが 男に金を渡して隠蔽を図ろうとしたのがまずかった。 すぐに示談が成立したものの、こうして丸一日厳重注意を受けることとなった。 工場長が警察の呼び出しを受けたという報せは、早くもゆっくり製菓本社にまで届き、 すぐにでも本社へ赴いて釈明をしなければならなかった。 本社はゆっくりゼリーの販売数が落ちる一方である自分の工場をできれば閉鎖したいと考えている。 この一件が○○工場を切り捨てる引き金になりかねない。工場長は深くため息をついた。 その時、工場長の携帯が鳴る。 懐から携帯を取り出して人ごみの中という事にも気をかけずに怒鳴り声をあげる。 「うるさいぞ!今帰るところだ!」 「す、すみません。例の件に関することなら何時電話してもいいと伺っておりましたので」 「なに!?れいむが見つかったのか!?」 「その件につきまして、元社員の○○様から連絡がありましたのでお繋ぎ致します」 電話に出た元社員の○○は工場長をこんな目にあわせた男、28番だった。 「誰かと思えばお前か!・・・よくもこんな真似をしてくれたな!」 「通報したのは自分ですが、情状酌量を訴えたのも自分ですよ?すぐ帰れたでしょう?」 「だったら初めから通報するな!馬鹿なのか!?死ぬのか!?お前は!!」 「済んだ事をどうこう言っても何もはじまりませんよ、それよりも」 「そうだ!れいむは何処にいるんだ!さっさと答えろ!クズが!」 「そうです。貴方の飼いゆっくりを見つけたので電話をさせて頂きました」 数時間後、男と工場長は落ち合って二人で繁華街の通りを歩いていた。 たどり着いた先は男のアパートとは逆方向の繁華街の外れにあるゆっくり保健所。 簡素な施設内には受付に1人従業員が居るだけで後は誰も居なかった。 小さく会釈をして従業員と会話をする男、 工場長はそれを横目で見ながら苛立たしそうに体を揺すって舌打ちした。 「おい、早くしろ!私は忙しいんだ!」 男は工場長を一瞥すると無視して話を続けた。 工場長は寂しくなつつある頭髪をガリガリと掻き毟った。 28番のせいで今まで警察署に拘束され、この後は本社への釈明と奔走しなければならない。 工場長の苛立ちは頂点に達していた。 やがて話を終えた男が踵を返して「ついてこい」と目で合図する。 男の手には金属製のカードのようなものが握られている。 工場長の視線に気がついた男は目を細めるとその金属製のカードをポケットにしまった。 男に案内されて地下へ進む階段を下りていく。 工場長は先程から人を小馬鹿にした様な態度を取る男の後頭部に叫んだ。 「この下に保護されているのか?おい!ここにれいむが居るんだな!」 「普通ペットが居なくなったらこういう所から探すものだと思いますが」 「急に居なくなったのでな」 「居なくなったら盗まれたと思い込むのは小学生の思考ですよ」 「なんだと!貴様、さっきから無礼じゃないか!」 工場長が憎々しげに男を睨みつける。それに反応することなく男は階段を下りる。 その先の大きな空間はガラスの壁面で真ん中から仕切られており、一見すると水族館の様だった。 その分厚いガラスの向こう側に無数のゆっくり達が所狭しと蠢いている。 ゆっくり達が階段を下りてきた2人に気がついて一斉に振り向いた。 「ゆ゛っ!人間ざん゛!だずげでね゛っ!ま゛り゛ざをごごがら出じでね゛っ!」 「ここはゆっくりできないわ!おねがい!ありすを出して!」 「ちぇんを助けにきてくれたんだねー!わかるよー!わかるよぉぉぉ!」 「ゆ゛わ゛ぁぁぁん゛!どぼじでれいむがごんな゛め゛に゛ぃぃぃl」 元飼いゆっくりや街へ下りてきた野生のゆっくりの終着駅であるゆっくり保健所。 昔は食用として育てられたゆっくり以外もゆっくり加工所へ連れて行かれ様々な加工が行われていたが、 今は衛生面を考慮し、街に住みつき引き取り手の無いゆっくりはこのゆっくり保健所へ送られる。 ゆっくり達はこの場所の只ならぬ雰囲気に本能的に身の危険を感じていた。 あまあまは天井から降ってくるが、ここはゆっくりできない気がする。一刻も早くでたい。 元飼いゆっくりの中には飼い主からここがどんな所か聞かされているゆっくりも居た。 ここから出るには飼い主の気が変わるか、新しい飼い主に拾われるしかない。 ゆっくり達にはもう後がない。我先に自分をアピールする。この先に待っているのはゆっくりできない「処分」だ。 「れいむ!どこだ!?迎えに来たぞ!」 工場長はガラスの壁を見渡して副工場長れいむを探す。 しかし必死の形相で助けを請うゆっくり達の群の中に ピンクと白の横縞の服を着た副工場長れいむの姿は見当たらない。 「居ないじゃないか!どうなっているんだ!」 「・・・・・・」 男は工場長の問いかけには答えずに ガラスの壁によりかかり、ゆっくり達を見渡して語りかけた。 「お前たち「こうじょうちょう」さんはれいむを探してるらしいぞ?知らないか?」 この言葉・・・! 工場長はつい先日の男の部屋での光景を思い出す。 まさか・・・まさか・・・やはりあの部屋にれいむは居たのか!? だというのに私はこのクズに媚びへつらった挙句、通報されて工場の閉鎖の危機に立たされている。 やってくれたな・・・!番号作業員ごときが・・・!クズ!クズが!! 「やはりお前がやったのか!!」 「だったらなんだって言うんです?」 信じられないといった表情で男を睨みつける工場長 あらゆる罵詈雑言が男に叩きつけられたが、男はそれを聞き流す。 男はジッと工場長の表情を見ていた。 目を見開き、顔を真っ赤に硬直させ、身を震わせながら喚く油の塊。まるでゆっくりだ。 思わず笑いがこみ上げそうになるが堪える。我慢だ、もっと面白いものがこれから見れる。 「バッチのついてないクソ袋が生意気な口を聞いたのでここへ放り込んだまでです」 そう吐き捨てると、ポケットから小さなピンクと白の横縞の服を取り出し床に捨てる。 それを見て驚きの声を上げる工場長、それは間違いなくれいむが着ていた服だった。 「これはれいむの・・・くそ!このクズが!貴様一体、私に何の」 「今回も見落とすつもりですか?」 工場長の話を断ち切り、 男はポケットから一枚のカードキーを取り出して ガラスの壁面の隅についている閉じられた小窓をコンコンと軽くノックするように叩いた。 「俺はこの小窓を開く事ができるカードをもっています。 貴方が指名したゆっくりを一匹だけ連れてきてあげますよ」 工場長は暫く男の手に握られているカードを見つめていたが、 口の端を釣り上げて鼻を鳴らしながら笑い出した。 「馬鹿か?お前は?そんな板切れかかげて神様気取りか? 私も手続きして借りてこれば良いだけの話だ!無学のクズが!そこで踏ん反り返ってろ!」 踵を返して歩き出し、階段に足をかける工場長。 「わかってないな」 「何?」 「ゆっくりの処理が行われるのが毎週月曜の22時、 そしてカードの貸し出しの手続きにかかる時間は大体20分」 今日は月曜日 工場長は腕時計を見る。今の時間は21時56分 これから階段を上り、一階にある受付でカードキーを借りる手続きをしていたらとても間に合わない。 さっき上で無駄話をしていたのは時間を調節する為だったのか!時間はあと4分しかない! 工場長は横目で泣き叫ぶゆっくり達を見る。 これっぽっちの時間であの無数のゆっくりの中から私のれいむを見つけることなど・・・ 「く、くそ!それをよこせ!」 工場長が床を蹴って駆け出し、男に掴みかかる。 男はそれを難なく振りほどいて工場長の足を引っ掛ける。 バランスを崩して床に滑り込む工場長、小さくうめき声を上げて床に這いつくばる。 別に男の力が強いわけではない、工場長の力が弱すぎるのだ。 息を切らせながらなんとか立ち上がる工場長。 再び飛び掛ってくる事は無かったが、その目は怒りに震えている。 「こんな事が許されると思っているのか!このクズ!クソクズが!」 「おぉ、こわいこわい」 工場長は身を振るわせて地面に足を叩きつける。 「おい!誰か!誰か居ないのか!なにをやってる!税金泥棒が!」 「いくら騒いでも今日びゆっくりの掃き溜めなんかには誰も来ませんよ」 男は念入りにこの保健所の事を調べていた。 職員ですらこの部屋までは来ずに天井の開閉式の穴から通じている地上のゴミ箱から 餌や連れてきたゆっくりを投下していた。ここまで訪れる人間は年に数える程しか居なかった。 ガラスの壁の奥で投棄された時に潰れて死亡しているゆっくりが居る事や 床のアスファルトを破って草が繁殖している事、 土砂を取り除くためのスコップがさび付いて床に転がっている事もそれを物語っていた。 助けなど来ない。ゆっくりとそれを理解した工場長はガラスの壁面に顔を押し付けて叫んだ。 「れいむ!何処に居るんだ!返事をしてくれ!」 「「「「れいむはここだよ!はやくたすけてね!かわいいれいむが困ってるよ!!」」」」 ガラスの壁の向こうに居る全てのゆっくりが工場長に返事をした。 駄目だ。わかるはずが無い。 汗を垂れ流し、呼吸が荒い工場長とは対称に男は涼しい顔で時計を見ている。 「あと3分」 「だまれクズが!」 「それしか言えないんですか?」 「くそっ!くそっ!どれだ!こんなのわかるわけ・・・」 いやまて。 無数に居るゆっくり達の中から副工場長れいむを見つけ出すのは一見すると不可能に思える。 しかし少し考えればそんなことは無い。他のゆっくり達が知らないれいむの情報、 それをゆっくり達に質問すれば難なく副工場長れいむを特定できる事に気がついた。 「れいむ!私の家でお前は毎日何を食べていた!答えてくれ!」 「ゆ゛っ!ゆゆっ!れいむはいつもあまあまをたーくさんむーしゃ!むーしゃ!じだよ゛っ!」 「きれいな芋虫さんをお腹一杯食べたのぜぇぇぇ!」 「とかいはなゆ゛っぐりフードよぉぉぉ!」 「おうどんだべだぁぁぁぁいぃぃぃ!!」 野良のゆっくりは今までに食べた食べ物中で一番ゆっくりできたものを 元飼いゆっくりは飼い主から聞かされた菓子の銘柄を叫んだ。 それらは全て正解ではなかった。しかしその中の一匹のゆっくりが叫んだ言葉に工場長は目を見開いた。 (後編へ)